国民1人あたり3万円強の負担増加に

4月30日、札幌で昨年度の決算発表記者会見に臨んだ北海道電力の川合克彦社長は、「原子力規制委員会の安全審査を見て、今夏までに泊原子力発電所の再稼働の見通しが立たない場合には、電気料金再値上げの申請を行うことについて、判断を下さなければならない」旨、表明した。泊原発の運転停止が長期化し、代替用の火力発電で使う燃料費が膨脹して、同社の経営に打撃を与えているためだ。現実に、2014年3月期の北海道電力の連結最終損益は629億円の赤字となり、3期連続の最終赤字が確定した。

北海道電力の経営は、日本政策投資銀行から500億円の資本注入を受け、当面、一息つく形になっているが、これは、あくまで一時しのぎの弥縫策に過ぎず、フロー面で赤字を垂れ流しにしたまま、いくらストック面で対症療法を講じたところで限界があることは、誰の目にも明らかである。同様の状況は、やはり日本政策投資銀行から1000億円の資本注入を受ける九州電力の場合にも観察される。まだ資本注入には至っていないが、関西電力の場合には、会社の規模が大きいだけに、経営危機の社会的影響はさらに大きい。

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図1:3.11前後における関西電力の財務状況 図2:電気事業者の電源構成の推移

図1は、11年3月11日の東日本大震災にともない発生した東京電力・福島第一原子力発電所の事故前後の時期における関西電力の財務状況を示したものである。3.11以前の状況を反映する10年度末に1兆4900億円あった関西電力の純資産は、その後の3年間で8100億円にまで減少した(単体)。しかも、この8100億円のなかには、将来の利益を見越して計上している繰延税金資産が5000億円含まれており、実質的な純資産は3100億円程度にとどまる。つまり、実質的な純資産はすでに資本金(4900億円)を下回るレベルにまで毀損しているのであり、このままの状況が続けば債務超過も視野に入れざるをえないのである。

このように電力会社が軒並み経営危機に陥っているのは、3.11以後、原発の運転がほぼ停止状態にあり、代替用の火力発電で使う燃料費が急膨張しているからである。この点について、今年4月に発表された総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の電力需給検証小委員会の報告書は、図2と表1を示しながら、次のように述べている。

「電源構成に占める火力発電比率は、東日本大震災前の2010年度には約62%であったが、震災後の2012年度には88%を超え、オイルショック時(1973年度:80%)を上回っている」(図2参照)。

「原子力発電所の停止分の発電電力量を、火力発電の焚き増しにより代替していると仮定し、直近の燃料価格等を踏まえて試算すると、東日本大震災前並(2008~2010年度の平均)にベースロード電源として原子力を利用した場合に比べ、2013年度の燃料費は約3.6兆円増加(人口で単純に割り戻すと、国民1人当たり3万円強の負担増加。販売電力量(9000億kWh)で単純に割り戻すと、4円/kWhの負担増加)したと試算される」(表1参照)。