昨年度、19年ぶりに過去最高の売上高を更新した家庭用アイスクリーム。絶好調市場に、今何が起きているのか。

コンビニ×SNSで「ネタ消費」が旺盛

赤城乳業 マーケティング部次長 萩原史雄

「コンビニアイス」の盛り上がりはすさまじい。

「最大手のセブン-イレブンが、高級品のハーゲンダッツと大衆向けのガリガリ君の両方と組んで成功したことが大きい。今後は競合のコンビニから新商品が出てくるはず」(アイスクリームプレス社長・二村英彰さん)

「ガリガリ君」は1本60円という手頃さも手伝い、13年の販売は約4億8500万本と、日本人全員が年に4本食べている計算だ。10年にわたりブランドを担当する萩原史雄さんは、こう説明する。「やっていることは昔から変わらず、消費者のクチコミ効果です。それが05年のWeb2.0に始まり、ツイッター、フェイスブックと情報が拡散するインフラが整った。今やガリガリ君はコミュニケーションツールになっています」。

定番以外に「衝撃シリーズ」として、「コーンポタージュ」(12年)、「クレアおばさんのクリームシチュー味」(13年)に続き、今年3月には「ナポリタン味」を発売した。「ネタづくりでは、お客様の期待を裏切ることもめざす」とか。

ガリガリ君の衝撃シリーズ。10以上の斬新なアイデアが持ち上がり、選ばれた3点が商品化された。

一見、向こう見ずな手法に思えるが、そこには明確なマーケティング戦略がある。

「基本は『アイス売り場に人を集める』ことが目的で、衝撃シリーズも最終的には『定番の味に返す』戦略です」(萩原さん)

バーアイスでガリガリ君とは別の路線を歩む森永乳業の「PARM(パルム)」は、売り上げ100億円超のブランドでは最も新しく、2005年の発売。初年度と比べて売り上げ規模は8倍に拡大した。「平日のちょっとした贅沢のときに楽しむブランドをめざしています。個別タイプは20代、30代の独身女性、マルチパックでは40代、50代で子育てが一段落した女性に支持されています」(森永乳業・谷口・ブエ真奈美さん)

6本入りパックは380円と500円(希望小売価格)。“ハーゲンダッツ未満”の価格も人気の理由のようだ。