採用活動で面接官として駆り出され、応募者への質問で頭を悩ませた人も多いのではないだろうか。

採用面接において、就職差別につながる出自や思想信条についての質問はタブーとされている。しかし、バックグラウンドや内面に切り込む質問をせずに人物を見極めるのは容易でない。厚生労働省のサイトでは、就職差別につながるおそれがあるものとして、「尊敬する人物」や「購読新聞・雑誌・愛読書」があげられている。はたして、どのような質問ならセーフなのか。

「難しく考える必要はありません。原則的には何を聞いてもいい。経営者は、採用の自由を持っているのですから」

と解説するのは、採用トラブルに詳しい畑中鐵丸弁護士。いったい採用の自由とは何か。

「採用と解雇は、コインの裏表です。解雇は不自由であり、社員を1度雇ったら簡単にクビにできません。だからこそ入り口である採用段階では、使用者側に労働者を調査する権利が認められています。面接で立ち入ったことを聞くのも採用の自由のうち。聞きたいことがあれば、遠慮せず質問すればいいのです」

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聞きにくいことを聞き出すにはどうすればいいか? 「採用面接で配慮すべき」とされる質問(厚労省HPより)

とはいえ前述のように、厚労省は就職差別につながるおそれがある事項を指摘している(図参照)。これらを質問しても法的に問題はないのだろうか。

「これは、労働省時代の2000年に出された『労働者の個人情報保護に関する行動指針』をベースにしたものでしょう。厚労省の解釈に過ぎず、法的強制力はありません。最高裁は『労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項について申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない』(最高裁 昭和48年12月12日)といっています」

たとえ厚労省が眉をひそめても、最高裁のお墨付きがあるのだから萎縮する必要はないのだ。