「法律を引き合いに出すと、死後のことについて定められているのは、人が死んだら市区町村役所に死亡届を出さなくてはいけないという“死亡届の提出”と、死後24時間が経過していなければ遺体を火葬してはいけないという“24時間火葬禁止”の2点だけ。これら遺体の処置・処理をめぐる決まり以外は、いってしまえばすべてがオプション。自分たちで好きに決めればいいんです。しようと思えば今でも土葬ができるし、骨を海などに撒く散骨や、墓石の代わりに花木を植える樹木葬もまったく問題ない。そもそも、法律のことだけ考えればお葬式をする必要すらありません。墓石を例にとっても、“家墓”の意識が薄れ、墓を個人のものと捉える人が増えてきた最近では、ギターの形や星の形など、故人が生前好きだったものをかたどるケースもあります。また、従来は『○○家之墓』と家名を彫っていたスペースに、故人の好きな言葉を彫ることも。これらは『死後も自分らしくありたい』という個性の表れでしょう。時代に合わせて変わってきた葬祭や埋葬の歴史を知れば、もっと広い心で自由な選択ができるのでは」(井上)

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合葬式のお墓について

では、私たちの墓に対する意識はどうなっているのだろうか。小谷が所属する第一生命経済研究所が数年前に行った調査によると、散骨について、「遺骨を全部撒いてもらいたい」と考える人は全体で18.9%。40代、50~64歳では、4割もの人が散骨を希望している。これは決して少なくない数字だ。また、友人知人などを含める血縁を超えた人たちで一緒に入る共同の墓(共同墓、合葬墓など)に関しては、「自分も利用したいと思う」と答えた人が全体では11.5%と少ないものの、女性では14.5%と少しポイントが上がり、子どもがいない人になると、17.3%にも上った。

(PIXTA=写真)
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