実用化へ向けて解決すべき3つの課題

もちろん、メタンハイドレートの実用化・商業化には、解決しなければならない問題が多々存在する。開発への取り組みが一歩先行している砂層型メタンハイドレートに限ってみても、以下のような課題を達成しなければならない。

第1は、生産技術の確立である。13年に実施した海洋産出試験では、坑井内に砂が流入する出砂が想定以上に発生したこと、気象条件が悪化したことなどにより、当初2週間を予定していたガス生産実験が6日間で終了することとなった。出砂など長期安定生産を行ううえで障害となる課題を克服する技術開発が急務である。また、減圧法のさらなる改良によって、生産量を増大させる必要があることも判明した。

第2は、経済性の確保である。13年の海洋産出試験の目的は、海洋の実際のフィールドで減圧法を適用した場合、どれくらいのコストがかかるかを推計するデータを得ることにあった。今後は、減圧法に限らず他の手法も視野に入れて、生産コストを飛躍的に低減する方策を講じなければならない。

第3は、環境面での影響の把握である。これからは、より長期の海洋産出試験の実施へ向けて、事前・事後を含めた環境面での影響評価を正確に遂行することが重要な意味を持つ。

石油・天然ガス、レアアースはどうなるのか

なお、新「開発計画」は、メタンハイドレート以外の海洋エネルギー・鉱物資源についても、中長期的な開発方針を打ち出した。

各資源の開発目標は、以下のとおりである。

○石油・天然ガス

我が国周辺海域の探査実績の少ない海域において、石油・天然ガスの賦存状況を把握するため、三次元物理探査船「資源」を活用した基礎物理探査及び賦存可能性の高い海域での基礎試錐を機動的に実施する。また、得られた成果等を民間企業に引き継ぐことにより、探鉱事業の推進を図る。

○海底熱水鉱床

国際情勢をにらみ、平成30年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう、既知鉱床の資源量評価、新鉱床の発見と概略資源量の把握、実海域実験を含めた採鉱・揚鉱に係る機器の技術開発、環境影響評価手法の開発等を推進する(中略)官民連携の下、推進する。

○コバルトリッチクラスト(要旨)

公海域については、平成40年(28年)末までに民間企業による商業化を検討する。南鳥島周辺のEEZについては、資源量評価のための取組を本格化する。

○レアアース堆積物(要旨)

当面、3年間程度で海底に賦存するレアアース堆積物の調査を行い、概略資源量の把握に努める。同時に高粘度特性堆積物の採泥技術、大水深下からの揚泥技術などの開発に取り組む。

(大橋昭一=図版作成)
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