世間のことがある程度わかった大人になってから、受験科目を見直してみると、なかなか知的好奇心をくすぐるものがある。もはやテストの心配もない。「大人の教養」を楽しんで身につけてみませんか?

世の中の現象を、感情論でなく本質で捉える力を養う

物理を学び、その思考が身につくと、世の中で起こっているさまざまな問題をまったく別の角度から見ることができ、解決法を探ることができます。

たとえば食糧問題。アフリカでは飢えに苦しむ人が大勢います。人口増加によって地球は早晩もたなくなるという説もあります。今、話題のTPPも各国の食糧に対する思惑が絡んでいます。

代々木ゼミナール講師 漆原 晃 
スポーツを見てもその運動力学を計算してしまうほどの物理好き。物理の楽しさを広めるHPも開設している。『必修サブノート物理I』など著書多数。

しかし、エネルギー保存の法則から導いた計算では、地球にはまだ多くの人を養う余裕があるのです。食糧を生産するエネルギー源は太陽光です。これに世界の耕地面積、食糧となる植物の光合成効率などから計算すると、地球は240億人を養えると導きだせます。現在、世界の総人口は約70億人。あとは政治などの力により食糧を効率よく平等に分配すれば、飢える人はいなくなるはずです。ただし、耕地面積が少ない日本の計算上の定員は8000万人。食糧を輸入に頼らなければならないことに変わりはありません。

私たちは好き嫌いにかかわらず、物理的現象とともに生きています。現在起きている問題が物理的なことに起因しているのか、それとも政治的なものによるものなのか、感情論ではなく本質を捉えることが求められている時代です。また、未来を担う多くの技術が物理から生まれています。物理というアンテナを張ればビジネスでも先んずることができます。