「半額は無理だが、2割までなら……」という妥協

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。トップセールスに輝くこと6期、「伝説のトップセールスマン」と呼ばれ、当時の活躍を描いた書籍は10万部を超えるベストセラーとなる。96年には日本初の独立/起業の情報誌「アントレ」を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。現在はセレブレイン社長。人材育成、人事制度構築など、人事コンサルティングを手がける。

セレブレインのWebサイト
http://www.celebrain.com/

営業はお客様からさまざまな要求(値引きなど)を受けることがあります。もちろん、仕事ですから、多少の要求であれば笑顔で対応するのは当たり前。できれば、

「D社は仕様変更を頻繁に要求する場合がある。対応できる準備をしておこう」

と先回りしておきたいもの。ただ、限度を超えた『無理な要求』をしてくるお客様もいます。例えば、見積もりを半額にまで値下げして欲しい、あるいは納期を大幅に短縮して欲しいと

「いい加減にしてください。さすがに応えられません」

と怒りの形相で切り返したくなるくらいの要求。ただ、お客様ですから怒るわけにはいきません。そこで、よくあるのは

「それは厳しいです。ご勘弁ください」

と丁重にお断りするパターン。ただ、仕事はまとめたいのが本音なので、お客様の要求に対して折れる「落としどころ」を提案する人が大半。

当方もこうした落としどころを提案せざる得ない状況になったことはたくさん経験済み。半額は無理だが、2割までとか、あと1セット注文を増やしてくれたら3割まで何とかします……と妥協。ついには、収益的にはうま味が少ない仕事を受注してしまったことがあります。まさに労多くして幸薄い仕事。

加えて、こうした妥協をすると、次の注文でも同じように無茶な要求が飛んでくる負のスパイラルの陥ってしまう可能性大。さらに

《あの営業は値引き要求がある前提で高い見積もりを出しているに違いない》

とマイナスのレッテルさえ貼られてしまう場合もあります。落としどころの提案には、それくらい危険が潜んでいるのです。一方で

・何としても仕事を取りたい
・負のスパイラルには入りたくない

この葛藤に苛まれて、ただ、その適切な策が見出せずに悶々とした日々を過ごしている営業は少なくありません。取材していくと、お客様の無茶な要求の対応で営業の仕事に嫌悪感さえ抱いている人にも出会いました。