正社員にならずに働く、個人事業主として働く、などの
手段を選ぶ
年金減額を免れるには、いくつかの選択肢がある。最も簡単なのは、パートタイマーとして勤務することだ。在職老齢年金の制度によって年金を減額されるのは、厚生年金に加入している人。それ以外の人は「在職」と見なされないのだ。つまり、60歳以降も継続雇用で仕事をバリバリ続けて、厚生年金に加入する人だけが、減額の対象になるわけである。
どの職場でも、その正社員の労働時間の4分の3以上働く人は、厚生年金に入らなければならない。たとえば、1日8時間労働で、週に40時間が所定労働時間であれば、30時間以上働くと厚生年金への加入義務が生じる。この点を考慮し、1日に6時間未満しか働かないパートタイマーのような雇用形態にすれば、保険料を払わずに済み、年金を減額される心配もなくなる。
ただし、年金の減額を恐れて労働時間を調節するよりは、存分に働いたほうが断然トクというケースも多い。首尾よく元の職場で雇用延長になり、50代のときとさほど変わらない賃金を受け取れるのであれば、年金のことは気にせずに働いたほうが得策だろう。それに、たとえ減額されても、60歳以降に働いて支払った厚生年金の保険料は、後々の年金に上乗せされるので、一方的に損をするばかりではない。
また、厚生年金に入っていれば、自動的に健康保険にも加入することになる。これをやめてしまうと、自分で国民健康保険料を支払わなければならない。国民健康保険の保険料は市区町村によって異なるが、前年の収入などで決めるため、高額に及ぶことも(法律で定められている最高額(医療分・支援分・介護分)は年間68万円)。定年前の収入を下敷きに算出されるとなれば、かなりの負担になることは必至。さらに、厚生年金に加入していれば払う必要のない、妻の国民年金の保険料を支払う義務が生じる場合もある。
以上を踏まえると、働ける環境にあるならば、年金の減額のことは気にせず、どんどん稼いだほうがベターだとも考えられる。
前述のように、この減額制度が適用されるのは厚生年金に加入して働く場合とされている。そのため、狭き門ではあるが、公務員になって年金制度の異なる共済年金に加入する方法も考えられる。また、私立学校の教職員も、「私学共済」という名の厚生年金とは異なる年金に加入するため、減額されずに済む。
パートタイマー以外に有効なのは、家業を継ぐ、店をオープンさせるなどの自営業を始めること。または、フリーランスの形態で働くことだ。企業によっては、60歳で定年退職した後にフリーランスとして同じ仕事を継続できる場合もある。自営業やフリーランスといった個人事業主は、厚生年金に加入できないため、いくら収入があったとしても年金を減額されない。事業が軌道に乗るまでは、定収入が保障されないというデメリットはあるものの、70歳以降も長きにわたって働き続けられる可能性も高く、「生涯現役」で仕事を続けたい人にはピッタリといえそうだ。