あと、補足するならば、経営者の経歴にも特徴があるかもしれません。楽天の三木谷浩史社長、DeNA創業者の南場智子さん、サイバーエージェントの藤田晋社長などは、一度サラリーマンを経験しています。だからこそ、起業を志す社員の気持ちがわかるし、背中を押すようなところがあるのでしょう。カリスマ経営者として知られるソフトバンクの孫正義社長やファーストリテイリングの柳井正社長のもとから目立った起業家が生まれていないのは、彼らにサラリーマン経験がほとんどないことに起因するかもしれません。
市場価値の高い人材は、企業が成長期から成熟期に移る過程で輩出される傾向にあります。企業の黎明期から成長期にかけて、その当事者として関わった人材は大きく育ちます。実力を身につけた彼らが、今度は自らを試そうと起業するのです。
私は次にくるであろう人材輩出企業として、求人、住まい、結婚などライフイベント領域のメディアを運営するじげん、医療・介護の分野で事業を展開するエス・エム・エス、通信販売支援事業のファインドスター、クラウドソーシングやネットポイントメディアを手掛けるリアルワールドなどに注目しています。これらの企業は先に挙げた条件の多くを満たしており、今後、新たな起業家を輩出する可能性が高いでしょう。
(衣谷 康=構成 的野弘路=撮影)