無論、予算や希望からではなく、故人が高齢かつ長患いから他者との交流が長く途絶えて、「呼べる人もいない」と、必然的に選ばざるをえないケースも多い。
なお、人の死において法律で定められているのは、(1)死後24時間以内の火葬の禁止、(2)死亡届の提出、(3)遺体の破損、および遺骨遺棄の禁止、(4)火葬許可証の提出、といった4点のみ。これら以外は送る側(遺族)の裁量に任されるため、極論をいえば「葬式はしなくてもOK」だ。
とはいえ、葬儀式には故人を弔うとともに、残された人の悲しみや喪失感を和らげる効果や目的も担っている。簡略化や効率のよさを優先しすぎたために、「長く悲嘆から立ち直れない」といった声や、逆に世間体ばかりに囚われて「誰の、何のための葬儀かわからなかった」など、悔やむ事例は後を絶たない。
ただ、葬儀についても費用対効果が重視されるようになって久しい。100本の白菊とともに大勢で送るのも、一輪の白百合で静かに送るのも、想いの深さを測るには至らない。
唯一留意すべきは、葬儀は1人1回限りで、二度とやり直しが利かないという事実。送る側一同の意思疎通が図れていないと、「こうすべきではなかったか」と後々まで蒸し返す結果を招く。特に「直葬」を選択する際には、初期の段階で遺族側皆の納得と同意が肝心だ。