雑誌もネットも扱うニュースの傾向は重なる。つまり、カニバる、のです。

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カニバる!!既存事業vs新規事業

僕の決断はネットでした。ムックや書籍は出していますが、定期刊行物としての雑誌はゼロにしたのです。それで、どうなったか。読者数は、雑誌よりネットのほうが10倍増えました。広告収入などで利益も大いに伸びた。既存の事業を100%カニバって、100%ネット情報カンパニーという形で、雑誌部門は置き換わったのです。

単行本の書籍は今でもやっていますが、雑誌部門は100%、嫌々ではなくて積極的に、IT情報の旗手にして国内最大級のメディア・カンパニーへと自己変身していったのです。

京都大学経営管理大学院准教授 曳野 孝氏が解説

曳野 孝氏

孫さんは自社の競争相手、しかも現在だけでなく将来の潜在的競争相手についても強く意識しています。社内で競合する新規事業を立ち上げたのも、「いずれ他社が参入する」という判断があったからでしょう。社内競合でも、シナジーを期待した協力関係と、市場を奪い合うコンペティティブな関係がある。前者が理想に見えますが、協力関係は新規事業が育ちにくい。同社のネットメディアの育て方は、完全に後者でしたね。

●正解【B】――大きな利益の上がる既存部門でも、時代に合わせて抜本的に変える

※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。

(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成 小倉和徳、浮田輝雄=撮影)
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