言うことを聞かないわが子にイライラ。ついカッとなってしまうのは、親の"心の枠"に原因が。自己嫌悪に陥る前に、体質改善を図りましょう。

怒ることを選んでいるのは親自身

子育てをしていると、言うことを聞かないわが子にイライラし、ついカッとなって怒鳴ってしまうことがある。

たとえば慌ただしい朝、子供を学校へ送り出し、家事をすませて仕事に向かわなければならないのに、「早く食べなさい」と何度催促しても、子供がのんびり食事をしているとき。ましてや兄弟でふざけてみそ汁でもひっくり返そうものなら「どうして怒らせるようなことばかりするの!」と怒鳴りたくもなるだろう。

しかし、80万部を超える「怒らない技術」シリーズの著者で、怒りをコントロールする技術の普及に努めている日本アンガーマネジメント協会の理事も務める嶋津良智氏は、「“怒る”ことを選んでいるのは親自身」と言う。

「仮に、子供の学校も自分の仕事もない日で、何時までに家を出なければならないという時間的制約がなかったとしたらどうでしょうか。子供がのんびり食事をしていても、それほどイライラすることはないと思います。気持ちにゆとりがあれば、子供がみそ汁をひっくり返しても、冷静に対処できるはずです。このように、子供がしたことに対して、どう反応するかを選んでいるのは親自身なのです。そして、さまざまある反応の中から怒ることを選んでしまう理由は、実は、親の“心の枠”に原因があります」

心の枠とは、誰もが持っている自分なりのルールや価値観、思い込み、期待、思惑などを指す。そして、この枠の中におさまる事態であれば冷静に対応できるが、枠から外れた事態に出くわすと、イライラしたり、カッとなったりしてしまうという。

前述の例でいえば、何時に家を出るには、何時までに後片付けを終えて、外出する準備にとりかからなければならないかが、親には経験からわかっている。母親なら化粧の時間も加味される。これが、「自分なりのルール」に当てはまる。毎朝のことなのだから子供も理解しているはずだという思い込みや、「ウチの子ならできる」といった期待も含まれているだろう。

「ところが、子供は思ったとおりには動いてくれないものです。その結果、イライラして、怒りがこみ上げてくることになります。また、心の枠の大きさは、いつも同じとは限りません。機嫌が悪いときは枠がグッと狭くなり、普段なら笑ってやり過ごせることでも、腹が立ってしまいます。逆に、気分が良いときは心の枠も大きくなるため、細かいことに目くじらを立てることもありません」

こうした怒りのメカニズムを理解して、イライラや怒りを上手にコントロールする方法が、次に紹介するコツ“怒らないスキル10”である。