■ネット社会の予言の書

『一般意志2.0』
   東 浩紀/講談社

18世紀の思想家J.J. ルソーが『社会契約論』のなかで述べた「一般意志」という言葉は、21世紀のいまこそ実現しうるという大胆な解釈を行った一冊。ルソーの時代には難解だったこの理念が、インターネットなどの情報技術の進化によって現実のものになりつつあると指摘。「昔の概念を新たにとらえ直すという面白さがあり、ネット社会の予言書としても読める一冊です」。

■ウェブ時代の哲学を感じる

『なめらかな社会とその敵』
   鈴木 健/勁草書房

「複雑な世界を複雑なまま生きることは可能なのか?」。細胞の起源に遡り、網から膜と核が生成されるという視点から社会制度やメディア論を位置づけ、具体的な社会のあり方を提案する。「300年後の未来社会を構想するぶっ飛んだ内容ですが、具体的なモデルを提示し、それを小規模とはいえ実験する点が、ウェブ時代の哲学を感じさせます」。

フリー編集者 斎藤哲也
1971年生まれ。『現代思想入門』『本当にわかる現代思想』をはじめ人文思想系の書籍を数多く編集。編著に『使える新書』などがある。TBSラジオ「文化系トークラジオLife」やNHKラジオ「すっぴん」の「新書ナビ」にレギュラー出演中。
(構成=吉川明子)
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