話題になっていたものの、難しそうで敬遠していた本の数々。斯界の第一線で活躍する権威たちが、それら一見して難解そうな書の読み方を手ほどきする。

新しい制度や社会の姿を読みとく

ビジネスマンであれば、社会がどうなっていくかという考えなしには戦略を立てづらいですし、それこそが本当に知りたいことだと思うんです。しかし、哲学や思想というと、一見関係ないように見えるかもしれません。

ただ、歴史を振り返ると、たとえば中世から近代に移り変わる過程では、デカルトやジョン・ロックなど多くの哲学者の知見が社会に影響を与えました。近代的な科学や民主主義も背景には哲学があるのです。

この3冊は、いずれも70年代生まれの著者による論考で、まさに時代の転換期ならではの内容。現代社会の特性を見据えながら、新しい人間観や社会観について根源的に論じるこれらの本には、近代初期の哲学や思想と同じような香りを感じます。

一昔前までは個人は自由でも平等でもありませんでした。哲学者や思想家が、社会契約や私的所有といった概念をつくり、それがフランス革命やアメリカの独立運動などにもつながっていきました。

必ずしも思想家の理想通りにはならなかったかもしれません。しかし、彼らの考え方が一つのヒントとなって、新しい制度や社会が生み出されたわけです。これからも思想や哲学はそういう役割を担っていくのではないでしょうか?

■真に人間らしい生活とは何か?

『暇と退屈の倫理学』
   國分功一郎/朝日出版社

パスカルの有名な断章「部屋にじっとしていられないから、人間は不幸を招く」を皮切りに、文化人類学、考古学、経済学、消費社会論、動物行動学などのさまざまなジャンルの学問をハイブリッドに論じ、「人間らしい生活とは何か?」に迫る。人生論的なところが多分にあるものの、過去の哲学を引用しつつ、新たな解釈や批判も忘れていない。「現代の消費社会を“浪費の楽しみが奪われていく社会”と論じたくだりがユニークです。清貧の思想とは異なる消費社会批判を提出した点が新しいし、共感を覚えます」。