社長に就任して間もない2003年には兵庫と沖縄、2カ所の製油所を閉鎖した。2度のオイルショックを受けて、石油依存率を下げるために省エネ法、代エネ法ができたのは30年も前のことだが、石油は使い勝手がよく値段も安いため、日本の石油需要はバブル崩壊後も1999年まで伸びていた。いずれ需要が減ることはみんな頭では理解していたが、戦後一貫して右肩上がりできた石油業界は、染みついた行動パターンからなかなか抜け出せない。頭のどこかで、「またいい時代がくるさ」と考えている人が多かった。

しかし、いまや脱化石燃料、CO2削減の時代である。いま製油所を止めなかったら、止める時はない。製油所の地元にはたくさんのステークホルダーがおられるから、止めれば多大なご迷惑をおかけすることになる。製油所を止めるには大変なパワーが必要だ。しかし、やりたくないことを先送りすると、余計やりにくい状態を招いてしまうことになる。

人間、何か新しいものをつくろう、新しい事業をやろうというときは即断即決できるものだ。しかし、マイナスの負荷をかけないとできないことには、どうしても腰が引けてしまう。私はそんなとき、後からくる人たちが嫌な思いをしなくて済むなら、私がそれをやろうと考える。どうせ誰かがやらなくてはならないのなら、いま私がやろうと……。

(総括、分析・解説=楠木 建 構成=小川 剛 撮影=芳地博之)
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