そのかわり、クロトンビル(ニューヨークにあるGEの企業内ビジネススクール)の社内教育の素晴らしさはつとに有名で、こぼれてくる人材を狙ってGEの周りにはリクルーティング会社のリムジンがグルグル回っている、と噂されたほどだ。かつて米「FORTUNE」誌で、アメリカの経営トップはGEとマッキンゼーが東西の横綱、と特集したが、この教育あればこそなのである。
日本の多くの企業では雇用が保証され、あまり役に立たない人が何となく役職を持ち、何となく高い給料をもらっている。それがどれだけ若い人材の道を塞ぎ、組織の硬直化を生むことになるのか、経営者は真剣に考えるべきだ。
たるんだ雇用制度で人件費を抱え込む一方、怠慢にしているのが人材育成。広告宣伝に売上高の5~6%を使っている会社はざらにあるのに、売上高の0.1%を管理職トレーニングやスキルアップなどの人材教育に使っている日本企業など見たことがない。少数精鋭にすれば当然、1人当たりの教育費用は増やせるのに、全員におざなりな教育を施しているから、不況になると真っ先に削減の対象になるのが教育費、という悪循環だ。
それではいけない、「名札(社名や役職名)」ではなく「値札(商品価値)」がつく人生にしなければ……と気づいた人は、私が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学院大学(BBT)やボンド大学MBAコース、経営塾、問題解決学のコースなどにやってくる。しかも彼らの8割以上が、入学金や授業料は自己負担なのである。
自由主義社会の競争の中で生きている限り、所得格差は歴然と存在する。そして所得格差がある世界で生き抜くことを前提にすれば、会社に任せていても何もやってくれない。より高みに上れるように自分で努力するしかない。