同じ大学を出て社会に巣立ったのに、入った業種・会社によって20年後の年収は「4倍以上」も違ってくる。また、サラリーマンだけが源泉徴収され、すべての所得が国家に丸ごと管理されている。こんなことがまかり通っているのは、実は「日本」だけなのだ!
日本の労働人口の約8割を占めるサラリーマンの平均所得は、いくらかご存じだろうか。
国税庁の民間給与実態統計調査(2007年度)によると、年齢や性別すべて掛け合わせた平均所得は、437万円。同調査の数字は、1997年の467万円をピークに9年連続で減少し、この年にようやく歯止めがかかって前年比で約2万円アップした。
世界的な大不況にはまり込んだ昨年から今年辺りは、もっと恐ろしい数字が出てきそうだが、いずれにしても平均所得は500万円にはるかに届かないのが現実。カテゴリーでいえば完全な「ロウアーミドル(中流の下層)」クラスである。
平均値に近い世帯年収600万円を基準に、1000万円超を「アッパー」、600万~1000万円を「アッパーミドル」、300万~600万円をロウアーミドル、そして300万円以下を「ロウアー」と設定すると、日本ではロウアーミドルとロウアーの層が大幅に増え、アッパーもわずかながら増加、中間のアッパーミドルが急激に減ってきている。
今や日本では、年収600万円以下のロウアーミドル以下の中低所得者層が、全世帯の8割近くを占める。日本の常識とされてきた1億総中流社会はもはや崩壊し、所得階層が二極化してその分布がM字型を描く「M字型社会」へと移行してきている――。私は06年に『ロウアーミドルの衝撃』という本を上梓し、その中で日本の社会構造の質的変化をこのように分析したが、M字型カーブはさらに先鋭化して進行し、サラリーマンの所得格差はますます広がっている。