毎日運動し、炭水化物も控えている。それなのに、健康診断の血糖の数値が下がらない人がいる。糖尿病の研究・臨床に携わってきた矢野宏行医師は「ある患者さんは健康意識が高いにもかかわらず、血糖の状態を示すHbA1cが8%超と基準値を大幅に超える状態が6年続いていた。よかれと思った生活習慣が、むしろ数値を悪くすることがある」という――。
公園をジョギングしている男性
写真=iStock.com/Ugur Karakoc
※写真はイメージです

走った後に、血糖値が200近くまで上昇

毎朝早起きして走り、食事では炭水化物を控える。これだけ努力しているのに数値が下がらないとき、あなたなら運動量をもっと増やそうと考えるのではないでしょうか。

私のクリニックを受診した、会社経営者のAさんもそうでした。毎年、人間ドックを受け、その数値を自分で検討し、食事では炭水化物を控え、朝は起きてすぐジョギングをするなどの対策を重ねていました。50代で、見た目も中肉中背。健康意識の高い人でしたが、血糖の状態を示すHbA1cは8%を超える状態が6年も続いていました(糖尿病の診断ではHbA1c6.5%以上がひとつの基準)。その間、病院にはかからず、自分で生活を改善しようとしていたのです。

HbA1cは過去約1~2カ月の血糖の状態を反映するため、日ごとの血糖値はわかりません。そこで、腕などに装着して血糖値の変動を継続的に把握できるセンサーを使い、Aさんの1日の血糖値の動きを観察してみました。

すると、朝起きた時点ですでに156mg/dL(基準値は空腹時99mg/dL以下)。それが、ジョギングの後には200mg/dL近くまで上がっていたのです。すぐに朝食を摂ることで、そこからさらに上昇。これが下がり切らないうちに、また昼食を摂るため、1日を通して血糖値が高い。この状態が続くことで、HbA1cが下がらなかったのです。

おそらく、朝のホルモンの働きと、ジョギングによる体への負荷が重なって起きた現象でしょう。朝方には、体を活動させるホルモンの作用で血糖値が上がることがあります。通常はインスリンがその上昇を抑えますが、その分泌や働きが十分でなければ、抑え切れない場合がある。Aさんの場合はさらに、強い運動の負荷によって血糖値を上げるホルモンが分泌され、一時的に数値が上がっていたのです。

運動を「食後15分の歩行」に置き換えた

そこで、朝のジョギングをいったんやめてもらい、運動の時間帯と内容を変えました。

「朝食、昼食、夕食の後に、それぞれ15分ずつ、ジョギングではなくウオーキングをしてください」

その結果、食後の血糖値が上がりにくくなり、寝ている間の数値も140mg/dLほどから100mg/dLほどへ下がりました。運動の指導から3カ月後には、HbA1cも6.6%まで改善しています。

もっとも、朝のジョギングが、すべての人にとってHbA1c上昇の原因になるわけではありません。Aさんは父も兄も糖尿病で、本人の体質によるところもあると考えられます。ジョギング後に血糖値が上がったことと、長年の高血糖の原因は別に考える必要があります。

HbA1cの改善には薬や食事、飲酒なども関わるため、運動の変更だけの効果とは言い切れません。大切なのは、努力の量より、その中身を確かめることなのです。

ただし、数値を悪くしていた「よかれと思って」の習慣は、運動だけではありません。健康のために毎食飲んでいた野菜ジュース、数値を気にして始めた油抜きの食事、腰痛のために毎日飲んでいた市販の痛み止め。それぞれの習慣は、どの数値に、どう響いていたのでしょうか。

全文では、野菜ジュース、油抜きの食事、市販の痛み止めを続けていた3人が、診察で何を見つけ、何を変えて数値を改善したのかを、検査数値の推移とともに解説しています。

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