パリの会場で、隣人の畑を見よ
日本勢の手の中には、強みがある。ハイブリッドで磨いた電動化の技術。欧州や米国に根づかせた生産と人材。そして、一つの方式に賭けず、複数の技術を並べる戦略である。この強みを持つ企業が、隣人の変化を見て、自らの組み合わせを変えるとき、中国勢との競争は、日本のものづくりを鍛える「良い争い」になる。
読者の会社に引き寄せれば、問いは3つになる。これまで必要だった工程や部品のうち、需要が縮むものは何か。自社だけで担ってきた仕事のうち、組む相手を変えるべきものは何か。そして、顧客が新たに価値を感じ、対価を払う仕事は何か。
同じ「自動車産業の変化」でも、縮む仕事と、組み直される仕事と、新しく生まれる仕事は違う。自社の強みが、どこでは重荷になり、どこでは新しい価値の土台になるのか。本書第4章で示したのは、この見分け方である。業界全体の勝ち負けだけを見ていては、自社が次に担う仕事を見落としてしまう。
10月13日、パリの会場には、フランスで造られた日本のハイブリッド車と、欧州市場への攻勢を強める中国のPHEVが並ぶ。
その光景を見て、私たちは何を見るだろうか。並んだ台数か。それとも、種の選び方、水の引き方、耕し方が変わったことまで見るだろうか。
ヘシオドスが弟に説いたのは、隣人をにらむことではなかった。隣人の畑を見て、自分の畑へ向かうことだった。日本の自動車産業の勝ち筋は、壁の高さではなく、自分たちの畑をどう耕し直すかにある。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

