力の動き方には型がある

10月20日に朝日新聞出版から刊行する拙著『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』では、人工知能、戦争、民主主義、産業、人口・移民・宗教、覇権という6つのテーマを、古典に描かれた「構造」から読み解いた。

ここでいう「構造」とは、古典が何度も描いてきた、力の動き方の型のことだ。本書では、それを8つの要素で捉えている。人間の欲望や恐怖といった「動因」から始まり、「始まり」「成長」「転換点」「頂点」「崩れ」「終わり」へと進み、一巡すると同じ型が次の舞台で再び動き出す「反復性」である。この物差しを当てると、目の前のニュースが、どの局面の出来事なのかが見えてくる。

欧州の自動車市場に当ててみよう。中国勢の販売は伸び、商品も、生産する場所も、組む相手も変わっている。一方、ヤリスクロスの生産実績は、日本メーカーが現地で磨いてきた強みを示す。ここで問いたいのは、その強みが、これからも成長を支えるのか、それとも次の変化を見えにくくするのか、ということだ。本書の序章では、最強のときの強みが、そのまま「崩れ」の要因に転じる構造を描いた。築いてきた技術、人材、信用を、次の成長へどうつなぐか。隣人の畑を見る意味は、そこにある。第4章「産業」は、このヘシオドスの「良き争い」と「悪しき争い」から始まる。

では、パリにやって来た隣人は、いま、どのように自分の畑を耕しているのか。

隣人の畑で、何が起きているのか

数字も動いている。欧州自動車工業会(ACEA)によれば、2026年1~8月の欧州(EU・EFTA・英国)の新車登録台数は、BYDが前年の約2.4倍の23万4099台、奇瑞汽車が約3.8倍の20万7871台に達した。上海汽車の23万290台を加えると、中国の3社だけで67万台を超える。電気自動車もハイブリッド車もエンジン車も合わせた登録台数で、トヨタグループの61万8091台を上回る規模になっているのである。

トヨタのディーラー外観
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EUは2024年秋から、中国で生産された電気自動車(BEV)に、最大35.3%の追加の関税を課している。ここで見落とされがちなのは、この関税がBEVへの措置であり、PHEVは対象外だという点だ。

PHEVを欧州で売り広げるうえでは、この関税上の違いも追い風になる。報道によれば、8月に欧州で売れた中国ブランドの車の約3分の1を、すでにPHEVが占めた。電気だけで走る車にこだわらず、欧州の顧客が選びやすい商品へと幅を広げているのである。