相手の個性を理解し面白がってしまおう

皆さんの周りに「クセが強い人」はいるでしょうか。ものの言い方がいちいち嫌味だったり、親切なふりをして実は詮索好きだったり、突飛な行動に出たりと、ちょっと厄介で扱いにくい“クセつよ”な人はどの職場や集団にもいるものです。

苦手な人と無理に仲良くなる必要はありませんし、うまく距離をとってやり過ごせばいいでしょう。とはいえ、仕事などでどうしても関わらざるをえない場面もあります。そんなときはむしろ相手のクセを面白がってしまえば、ストレスなく付き合えます。

吉本ばななさんの青春小説『TUGUMI』には、とんでもなくクセの強い少女つぐみが登場します。何しろ物語はこんな一文で始まるくらいです。

「確かにつぐみは、いやな女の子だった」

彼女がどれほど性格が悪いかも、懇切丁寧に説明されます。

齋藤孝『座右の一行 ビジネスに効く「古典」の名言』(プレジデント社)
齋藤孝『座右の一行 ビジネスに効く「古典」の名言』(プレジデント社)

「つぐみは意地悪で粗野で口が悪く、わがままで甘ったれでずる賢い。人のいちばんいやがることを絶妙のタイミングと的確な描写でずけずけ言う時の勝ち誇った様は、まるで悪魔のようだった」

普通ならこんな相手には近づきたくないと思うでしょう。しかし本作の語り手である「私(まりあ)」はつぐみの従姉で、家庭の事情でつぐみの家が経営する旅館の離れに住んでいるため、距離をとるわけにもいきません。まりあ自身も「つぐみのものすごい人柄の被害を受けた人ベスト3」に自分が入ると認めています。

にもかかわらず、二人は仲のいい友達同士でした。ある事件をきっかけに、ただの親戚から友達へと関係が変化したのです。

つぐみがちょっとしたいたずらを仕掛けたことにまりあが激怒し、絶交寸前までいったとき、それまで他人に謝ったことなどなかったつぐみが「ごめん」と口にしたことで、「私とつぐみは良くも悪くも本当に仲良くなってしまった」と語っています。

「あの凄まじい意地悪と毒舌にさえ耐えれば、つぐみと遊ぶのは面白かった」

(構成=塚田有香 イラストレーション=米山夏子)

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