脳の統合的な活動としての役割

たとえば、あなたが手書きで日記を書いたりメモをしたりすることを想像してみてください。これを読んでいる今、昨日の出来事を振り返って、紙にメモしていただいてもかまいません。

そのときの手書きは、おおよそ次のような情報処理になります。

・視覚情報として脳にインプットされた昨日の出来事を想像する
・目の前のペンやメモを見る
・ペンと天然素材である紙に触れ、感触を知る
・天然素材であるペンのインクや紙の香りを嗅ぐ
・ペンを走らせる音、紙をめくる音を聞く
・昨日の出来事が美味しいものを食べたことなら味覚情報を刺激する
・漢字や文章表現がわからなくなったときは、記憶を振り返り、考える
・書いたメモ用紙を俯瞰し、出来事を冷静に見つめる

このようにまとめると、手書きという行為は、脳の統合的な活動とおわかりいただけるでしょう。

ノートに書き込むペン
写真=iStock.com/avan amonratanasareegul
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PCやスマホでは、人工的な機械に触れる感触、つまり触感しか得られず、視覚や味覚の情報を振り返る時間もないままテキストができあがり、作業中は無味無臭、機械音のみが流れます。

しかも、漢字や文章表現がわからなくても、PCやスマホが調べてくれます。さらには、あなたが思考しなくても文を書いてくれることもあります。これでは、メモのスピードは速くても、脳を活性化しているとは言えないですよね?

手書きは「脳を甘やかさない」

私たちの脳は、臓器の中ではもっともエネルギーの食いしん坊で、私たちが摂取した栄養分の約25%は脳が消費します。

その消費をおさえるためか、脳はつねに省エネをおこないます。つまり、ていよく活動をなまけようとするのです。

手書きは、そんな“なまけグセ”のある私たちの脳に対して、やさしく活動をうながす“脳のインフルエンサー”の役割を果たします。

それに対して、PCやスマホは便利ですが、裏を返せばそれは“なまけグセ”のある脳をさらに甘やかし、脳の活動を鈍らせてしまう“脳の甘やかし屋さん”と言えるでしょう。