ワニのいる沼に1つだけ武器を持っていくなら

しかし、実際に目つぶしをして助かったという実例は、オーストラリアでは一つもありませんでした。ワニに噛まれて痛みとショックでパニックになっている最中に、ワニの小さな目を的確に突くというのは、武道の達人でもない限りむずかしいのではないでしょうか。

また、噛まれているその手や足をワニの口のさらに奥に突っ込むと、ワニが嫌がって離してくれるのではないかという人もいます。ですが、そもそもワニの太く鋭い何本もの歯でガッチリ噛みつかれてしまっている手や足を、自力で動かすことができるか疑問です。

さらにいえば、ワニの喉には水中で口を開けても溺れないための筋肉のフタが閉じているので、それを手足でこじ開けるというのも、またむずかしい話です。

ある理由があって、あなたがどうしてもワニのいる沼に入らなければいけないとします。ひざの高さくらいまである水は濁っていて、いつ突然、ワニが水の中から飛び出してきて、あなたに噛みつくのかわかりません。ここであなたが一つだけ武器を持てるとしたら何を選びますか。

多くの人は拳銃や小型の銃を選ぶのではないかと思います。

拳銃
写真=iStock.com/Josiah S
※写真はイメージです

豪州では銃で撃退できた事例はゼロ

バシャ! という激しい水しぶきの音と同時にワニがあなたの片足に噛みつきました。その瞬間、強烈な衝撃と痛みが体に走ります。

ワニは噛みついた足を放してくれません。おそらくは足をワニに引っ張られ、水の中に尻もちをつくか、前か後ろに倒れるでしょう。十中八九パニックに陥るはずです。

そんな時、たとえ手に拳銃を握っていたとしても、よほど射撃の腕に自信のある人でない限りは弾をワニに命中させるのは至難のわざでしょう。ほとんどの場合、でたらめな方向に弾が飛んでいくか、銃を水の中に落としてしまうのではないかと思います。

実際のところ、あらかじめ用意していた銃で、自分や同行者に噛みついているワニを追い払ったとか、退治したという事例はこれまた、オーストラリアでは一つもありません。

ノーザンテリトリーで15年ほど前に実際に起きた事故で、以下のような惨事が報告されています。

政府から許可を得たワニの養殖業者が、三人一組となって野生のワニの巣から卵を採集するためひざ上まで水につかって沼地を歩いていたところ、先頭の人が突然ワニに襲われました。