過去の事故記録の分析から判明したこと
オーストラリアには、近年起きたほとんどの事故について、警察による詳細な記録が残っています。多くの場合、被害者の遺体は事故発生から24時間以内に回収されていて、その体にはワニによる最初の噛みつき以外の大きな傷はなかったと報告されています。
岸上でワニの最初の噛みつきをかわすことができれば、助かる確率は高くなります。では、不幸にもワニの噛みつきを避けられず、すでに噛みつかれてしまった場合はどうすればいいのでしょうか。そのまま、水中に引きずり込まれないためにできることはあるのでしょうか。
数年前、私は研究の一環として、1970年から2014年までの44年間にオーストラリア全土で起きたイリエワニによるすべての人身事故(109件、死亡27件)を詳しく調べてみました。すると、いくつかの興味深い事実がわかりました。
まず、被害者がワニに噛みつかれた時に、すぐそばに一人か二人の同行者がいて、被害者を助け出そうとした場合は、ほぼすべての事例で死亡を免れています。逆にいえば、現場にいたのが被害者だけだったか、もしくは他に人がいても、誰も直接手助けしようとしなかった(できなかった)場合に、被害者の死亡率が格段に上がっているのです。
42%は「同行者からの助け」があった
また、南アフリカでは、ナイルワニに襲われて助かった人の42%が同行者からの助けがあったというデータもあります。
ほとんどの場合、被害者は水際や浅瀬で足や手をいきなりワニに噛みつかれ、水中に引きずり込まれそうになっています。そのときに同行者が被害者の手や体の一部をつかんでワニと綱引き状態になり、ワニがひるむか、あきらめるかして口を放した隙に、陸上に引っ張り上げたとのこと。ワニのいそうな危険な場所では、なにより単独行動しないことがとても重要です。
同行者が噛みついているワニの顔を拳や棒で殴って助かった、という報告もあります。当たり前ですが、ワニは何かに噛みついている時はほかの物には噛みつけません。ある意味とても無防備になります。そこを攻撃されればワニも当然嫌がります。
また、足を噛まれた被害者が、とっさにそばに生えていた木の幹につかまって、もう一方の足でワニの顔を蹴って九死に一生を得たという事例もありました。
ほかの例も見てみましょう。
オーストラリアでは、古くからワニに襲われた時は目つぶしをすれば助かる、とよくいわれます。確かに拘束する時などに、目を覆い隠されると途端におとなしくなります。
