病気への備えは貯蓄増が基本
60代のご夫婦には基本的に保険は勧めないことが多い。すでに子供が独立し、必要性があるとしたら、せいぜい医療保険と介護保険といったところだからだ。
生活費や、旅行などのイベント費以外に夫婦で500万円、一人なら200万~300万円の医療費用の貯蓄があれば、医療保険もがん保険も不要である。思い切れるのなら、加入している保険はやめてもいい。
貯蓄に余裕がない場合は、いまある医療保障をキープしておく。ただ、その医療保障については「入っていた共済の保障が小さくなる」「保障が終了してしまう」という相談が寄せられることがある。
64歳までの健康な人なら、「都道府県民共済」の「入院保障型」に加入でき、65歳までは日額7500円の入院保障が確保できる。さらに65~69歳までの健康な人が加入可能なのは同共済の「熟年入院型」で、70歳まで日額5000円、70~80歳では3500円、80~85歳では2000円が保障される。
もし健康状態に不安があれば、新規加入しやすいのは「条件緩和型」の保険だ。ただし保険料が高いため、貯蓄を増やして病気に備えるほうが合理的だ。
ほかに60代の方で加入希望が多いのは「介護保険」で、一時払いの保険料で加入するケースが多い。しかし、この介護については「最も保険でカバーしなくてもいい分野」なのだ。
保険会社に余分なコストを払わないで済む貯金こそが“最強の保険”なのだ。とはいうものの、お金が貯まるまでには時間がかかる。保障が必要な子育て世代は貯蓄にお金を回す余裕があまりなく、その際のリスク回避のニーズにマッチするのが保険なのである。
しかし、介護状態になる可能性が高まるのは高齢になってからであり、その時点ではしっかりと貯蓄ができていることが多い。だから、あえて介護保険に加入してまで備える必要性はほとんどないというのが私の考え方なのだ。9年目に訪れる意外なメリットとはいえ、元本以上のお金が戻るような貯蓄性のある介護保険であれば、無駄が避けられ、普通預金に置いておくよりもいいという考え方もできる。