優先順位が高いのは出場する選手ではない

さらに言えば、熱中症のリスクが最も高まっているのは「甲子園に出場するような選手」ではない。スポーツ活動時の実践的な暑さ対策としては、

・水分補給
・暑熱順化トレーニング
・身体冷却
・コンディショニング(体調管理、栄養補給など)
・衣服条件(素材、着用方法など)

の5つが挙げられるが、このうち「暑熱順化」がポイントだ。これは「暑熱下で運動を続けるうちに、身体がそれに適応して運動時の発汗量が増加し、心拍数と直腸温度(身体深部の体温)が低下する」メカニズムだ。

ほぼ毎日、炎天下で練習を行う野球選手は「暑熱順化」が進み、暑さに耐えることができるようになる。暑熱順化には1~2週間かかるとされるが、6月末から夏の地方大会を戦う高校野球部員は、甲子園が始まる時期には、ある程度「暑熱順化」ができていると考えられる。

しかしながら、「練習機会が乏しく暑熱順化が十分でない学校、特に連合チームの選手」「審判、大会運営スタッフ」「応援団、観客」は暑熱順化ができていない。「暑さ対策」の優先順位が高いのは、むしろこういう人たちだ。

強い日差しを手で遮る人
写真=iStock.com/PraewBlackWhile
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エアコンも屋根もない地方球場の限界

日本高野連事務局長の井本亘は「甲子園球場のアルプススタンドの中に小さな部屋があるが、ここを臨時の休憩所にして、塩分補給のタブレットやドリンクなどを置いて、しんどくなる人に使ってもらうようにしている。本当に救護室に行って診察してもらわないといけなくなる手前の段階の人に、一息ついてもらって回復してもらうためだ。応援団限定だが、吹奏楽部の人なら5回のクーリングタイムにそこにいってもらうなどの対策もしている」と語る。

甲子園球場は2028年3月に銀傘ぎんさん(屋根)がアルプススタンドまで拡張される予定だ。これによって応援席の7割ほどがカバーできると言う。

筆者は毎年、夏の地方大会が始まると、各地の球場で試合を観戦する。地方大会でも、試合開始時間を早めたり、1日の試合数を減らすなどの対応が始まっている。

しかし甲子園球場と比べ、施設が貧弱な地方球場では「暑さ対策」はさらに厳しい。多くの球場では、ベンチ裏にエアコンの設置はない。また観客席に屋根や日よけがない球場も多い。