自助努力に頼るしかない現状

近年、こうした地方球場での審判の働きには涙ぐましいものがある。選手の表情を観察し、少しでも苦し気な顔をすると休憩させたり、水分補給をさせたりする。グラウンド整備時にも、選手に十分な時間を取らせるように配慮している。

客席に入ると選手の父母と思しき人が、うちわや凍った飲料を配ってくれる。「学校と関係ないです」と断っても「誰であっても、倒れられては困りますから」と勧められる。

前出の井本亘は「甲子園でやっていることを都道府県でそのまま実施できるわけではないが、数年前から、各地方でこういう『暑さ対策』をしている、という情報を資料にして配布して情報共有を進めている。

あと、大会で出る剰余金の中から、各都道府県に暑さ対策へ向けた助成をしている。今、都道府県の選手権大会をやっている球場が240~250ほどあるが、中には何の施設もない球場もある。そういうところで『冷風機とか扇風機などを仮設でもいいので設置して、そのレンタル料に助成金を使ってください』という呼びかけをした」と語る。

科学的知見の乏しさ

ただ、この問題でも「科学的知見」が十分に活用されていない側面が見られる。

2025年12月に広島大学で行われた「日本野球学会第3回大会」で、広島大学大学院人間社会科学研究科教授の長谷川博は、2023年夏の甲子園から導入された「クーリングタイム」の後で、選手の動きが悪くなったり、熱中症の症状が続出したことについて「運動をして筋肉の温度や皮膚温が高くなったところで、急激に冷やしてしまうと、筋肉、皮膚の温度がガクンと落ちてしまう。その後、ぱっと運動をすると、パフォーマンスが低下したり、足がつったりする。このあたりも、熱中症対策の研究成果を十分に取り入れてほしい」と語った。

広尾晃『高野連』(新潮新書)
広尾晃『高野連』(新潮新書)

サッカーなど他のスポーツでは、はるか以前から暑さ対策の研究者や専門家が参画して、科学的な調査が行われ、それに基づいて試合開催の可否や、選手、審判などへのサポートがマニュアル化されている。また、スタジアム内の救護体制も充実している。

「暑さ対策」では高校野球は出遅れた感が否めない。こうした他競技の事例にも学んで、適切な暑さ対策を導入すべき時が来ている。

地方大会では、複数球場で1日2試合を基本に進めている。1試合目と2試合目との間の時間をかなり設けたり、給水タイムも何年も前から3イニング終了時、7イニング終了時に設定するなど工夫をしている。ただ、地方で得たノウハウが、日本高野連と十分に共有されていないと思われる。

【関連記事】
大地震でまず確保すべきは水でも食料でもない…被災者が「これだけは担いで逃げて」という最も重要なモノ2選
日本人に突出して多いのはA型だが韓国は全く異なるのはなぜか…"血液型に刻まれた人類の進化と適応の歴史"
腸の壁に穴が空き、全身がボロボロに…内科医が「毎日食べてはダメ」と警告する"みんな大好きな朝食の定番"
「家の近所を歩く」よりずっと効果的…精神科医「ウォーキング効果を最大限に引き出す」とっておきの場所
パカッと開けて週に1、2個食べるだけ…がん専門医が勧める「大腸がんを予防するオメガ脂肪酸たっぷり食品」