「エンジニアの質がサービスの質を決定するという性質上、優秀なエンジニアの獲得はIT企業にとっての死活問題です。“量より質”が問われる部分も大きく、極端に言えば1人の優秀なエンジニアが、一般的なエンジニア100人分以上の働きをすることも多々あります。国内には数千社のIT企業がありますが、上位1%ほどの優秀なエンジニアを奪い合って凌ぎを削っているというのが現状です」
そう語るのは、リクルートの「CodeIQ」のプロデューサー 三木拓朗氏だ。「CodeIQ」とはリクルートキャリアが展開しているITエンジニアのための実務スキル評価サービスである。
「エンジニアという職種は、一種独特なカルチャーと気質を持った人々によって成立している世界。例えば、高度なスキルを持ったエンジニアは一般の転職市場になかなか出てきません。彼らが転職しようと思ったら、同じジャンルで活躍している知人同士のコミュニティのなかで新しい職場を紹介されたり、横の繋がりでヘッドハンティングを受けたりする。そのコミュニティの外部にある企業は、そもそも優秀な人材と会う機会に恵まれないわけです。運良くスキルの高い人材が応募してきても、人事部がエンジニアのスキルを正確に判断することは非常に難しく、『コミュニケーション能力が低い』等といった理由で有能な人材をあっさり落としてしまうケースも少なくない。営業部と同じような基準でエンジニアを採用していたら、現場のニーズに合うわけがありません」
また、反対にエンジニアにとっての「働く環境の魅力」を、人事部が十分に訴求しきれていない点もミスマッチだと三木氏は指摘する。優秀なエンジニアが職場を選ぶ理由は、給与や福利厚生といった一般的な待遇だけでなく、「自分が追求している技術を使えるか」「納得できる開発環境を得られるか」といった、職人気質なモチベーションの領分に負うところが大きいという。
「もちろん、あくまでもビジネスとして淡々と仕事をするエンジニアも少なくありませんが、優秀な人材ほどスキルに対してマニアックな探究心を持っている人が大半であり、こだわりも強い。それを満たせる環境を訴求することが非常に重要です。そうした細かいニーズに対して、人事部の採用担当が応えることには限界がある。エンジニアが求めるものは、同じく一線で活躍しているエンジニアにしかわかりません。つまり、企業内のエンジニアと外部のエンジニアを繋ぎ、直接会話できる“場”を作ることが、これからの採用方式には必要となっていくでしょう」