ロシアW杯2カ月前の「電撃解任」
当時の日本代表選手たちは守備でマンツーマン、攻撃でロングボールを志向する「弱者」のサッカーに慣れておらず、反発が起こってしまいます。ハリルホジッチ監督は次々に主力を招集外にし、選手のクオリティーが大きく低下する事態に陥ってしまいました。
対話する姿勢があれば決裂は避けられたかもしれませんが、ハリルホジッチ監督は一切妥協しなかったため、最終的に主力選手が投票をして監督解任を西野朗技術委員長に要求。ハリルホジッチ監督は2018年ロシアW杯の約2カ月前に解任されました。
この“事件”は日本代表の監督選考に大きな影を落とすことになります。コミュニケーションリスクを考慮して、外国人監督は敬遠されるようになりました。
〈西野朗監督〉(2018)
西野朗監督は緊急登板となり、2018年ロシアW杯に向けた準備期間は約1カ月しかありませんでした。
西野監督がそれまでの監督と決定的に異なっていたのは、「君たちの方がヨーロッパのサッカーを知っている」と言って選手たちに意見を求めたことです。いわゆるボトムアップ式のチームづくりです。
これによって全員にとって戦術が自分ごとになり、「チームのためになんでもやる」という空気が生まれました。もはや個人のエゴは見られず、自己犠牲の精神は過去のどの日本代表より高かったでしょう。
西野監督は選手たちにアイデアを出させたうえで、最終的にメンバー選考によって攻撃時に4‐2‐3‐1、守備時に4‐4‐2になる戦術を採用します。香川真司選手が攻撃時はトップ下に入り、守備時はFWの位置に上がってプレスをかけるというものです。
ゴタゴタ劇にもかかわらず、強豪に肉薄
この4‐4‐2によるミドルゾーンプレスがどハマりします。献身性と走力という日本人選手の特徴が、見事にピッチで表現されたのです。そして後半途中にジョーカーとして本田圭佑選手をトップ下に入れるという交代策も機能しました。
本田選手の1ゴール1アシストもあり、西野ジャパンはロシアの地でベスト16に進出することができました。
決勝トーナメント1回戦では終了間際にカウンターからベルギーに逆転を許し、史上初のベスト8は果たせませんでしたが、結果的に大会3位となるベルギーを追い詰めた戦いぶりは世界に大きなインパクトを残しました(図表4)。
そして、西野監督の次に就任した現監督の森保一監督はどのような軌跡をたどったのかは、本書で詳しく解説しています。




