「昭和から変わっていない」球団に悪印象

今回の騒動で、阿部氏はジャイアンツの監督から離れることになった。それによって、阿部氏の家庭内にも不安心理が伝播したことは想像に難くない。ジャイアンツ球団にも、相応の影響が出た。

交流戦開幕直前のタイミングで監督が突如辞任したことで、選手やスタッフに動揺が走っただろう。阿部監督が行った、70億円の大型補強がどうなるかわからなくなったとの指摘もある。球団の経営戦略は、重大な制約に直面したといえる。

プロ野球業界にも、ネガティブな影響が及んだ。AIの問題よりも、暴行に注目が集まったことで、球界は旧態依然といった偏った見方が各種報道で取り上げられた。それは、ファンの離反要因になるだろう。

放送業界にも影響は及んだ。スカパーJSATは、交流戦の一部の試合でファンが試合中にアプリでチャットできる機能を停止した。理由は明らかではないが、阿部氏の暴行問題に関するチャットが入り乱れ、ネット炎上やトラブルを防ぐためだったようだ。

AIによってみんなが損をしたケース

今回、AIが児相への相談を提案したのは、“ガードレール”機能によるものだったようだこの安全機能は、自殺、暴力、テロなどに関する質問、会話に関して、早期に専門家に相談するようユーザーを促すためのものだ。状況によっては、AIが警察に通報することもあるという。その目的の一つは、AI企業が事態を見逃した責任を問われる法的リスクの軽減ともいわれている。

差し出した手は空を切り、崖縁で人型ロボットに蹴落とされそうなビジネスマンのシルエット
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しかし、今回のケースを考えると、AIは個人、企業、ファンなどの人々のメリットを高めたとは言いづらい。むしろ球団にも関連業界にも、マイナスの影響が及んだ。ゲーム理論では、ゲームに参加したすべての人物の利得がマイナスになることを、“マイナス・サム”と呼ぶ。今回の例は、そうしたケースともいえそうだ。

一般論として、AIは、使い方次第で社会に重大なマイナスの影響を与える恐れを持つ。経済の分野での変化は、雇用喪失だ。中国、米国、わが国などで若年層からシニア層まで、AIがヒトに代わって業務を行うことが増えた。

こうした問題が続くと、やがてAIによって、社会心理が悪化する恐れもある。経済の専門家の中には、開発段階も含め、明確なルールがないままAIの利用が加速度的に進むことは世界にとって潜在的な脅威と危惧する者もいる。