虐待された子は「大丈夫」と言う

2018年の目黒区の虐待死事件では、5歳の船戸結愛ちゃんが亡くなる前に「もうおねがいゆるして」とノートに書いていた。阿部監督の記者会見と同日の2026年5月26日には、磐田市での父親による虐待死事件の公判があった。成人男性が2回殴っただけで肝臓がひどく損傷し、わずか3歳の男の子が気丈にも「大丈夫」といいながら亡くなっていったのだ。

多くの虐待において、親が悪いにもかかわらず、子どもは「自分が悪い」と親をかばい、「大丈夫だ」と健気にふるまうということを覚えておく必要がある。これまで多くの虐待死があって、現在の児童相談所の迅速な「48時間ルール」(虐待通報から48時間以内の子どもの安全の確認)の徹底がなされるようになった。そう考えれば、今回の件ではきわめて適切な対応がなされたといえる。

相談や通報をためらわないで

子どもは生活基盤を親に握られており、家庭から逃げ出せない。また、暴力をふるわれても、親を「加害者」とすることには誰しも抵抗がある。ギリギリの状態になってやっとその葛藤を乗り越え、相談につながるケースは少なくない。

今回の阿部監督の会見や、13万筆も集まっている復帰嘆願署名の広がりで、「自分が相談すれば親に迷惑がかかる」といった誤解が広がることだけは避けたい。この件で家族を壊したのは、子どもではなく阿部監督である。

もし、親からの暴力に悩んでいたら、園や学校の先生、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、子どもの人権ダイヤル、自治体の相談窓口など、さまざまな相談方法がある。最初に相談した所で話がうまく伝わらなくても、絶望せず、どうか勇気を出して他に相談してほしい。家庭内で暴力をふるわれて危険を感じたら、迷わず189(いち早く・児童相談所)や110番にかけてよい。

黄川田仁志こども政策担当大臣は、5月29日の会見で「もしお子さんが親からたたかれたり、嫌な思いをさせられたりして悩んでいる場合には、躊躇ちゅうちょなく児童相談所に相談して」とアナウンスした。このことをメディアは繰り返し伝えていく責任がある。

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