「投げ飛ばした」だけでDVに該当

酔った180cmの元アスリートの男性に、女子高校生が襟元をつかんで投げ飛ばされれば(巨人広報による)、さぞかし恐ろしかったことだろう。児童相談所に相談どころか、警察に即通報してもなんらおかしくない。

「児相の暴走だ」「すぐ通報するなんて」などと児相を責める風潮もあるが、それは間違っている。過去のさまざまな虐待死を受けて児相の初動は早くなっている。

筆者は4年前に、子どもが夫に頭を叩かれ、自治体に相談したことがある。いろいろと聞き取りを受けると、自治体から東京都の児童相談所へと連絡され、児相から呼び出され、面会をした。もし出頭を拒否をすれば、児相が自宅にやってきたはずだ。

わたし自身、児童相談所など無縁の人生だと考えていたので「まさかこんなことで?」と当初は非常に戸惑ったが、職員さんたちは大人の都合ではなく「児童の福祉(子どもの幸せ)」を最優先に考えているのがわかった。子どもが親の顔色をうかがってウソをつかないように、子ども2人はそれぞれ別々にヒアリングを受けた。夫も別日で聞き取りを受けた。

児相は心理士面談などフォローも

結果として児童相談所には「父親との同居では子どもの安全が確保できない」として別居を強く勧められたが、経済的理由からなかなか決心がつかなかった。日本には、虐待やDVで安全が確保できない場合に、加害者側を引っ越させる法律がない。夫婦で合意できなければ、被害者側が子どもを連れて家を出るしかないのである。

結局、母子で小さなアパートに引っ越し、児童相談所からは半年以上のフォローアップを受け、子どもたちは通所してそれぞれ臨床心理士のカウンセリングを数回受けた。3年経った今では、かつてと見違えるほどに子どもたちはのびのびしている。食欲も増して体つきもしっかりした。

叩かれたり怒鳴られたりすることがないという「心理的安全」がいかに大切かと思い知らされた。同居していたときの筆者は感覚が麻痺してしまっており、わかっていなかったのだ。今回のニュースを受けて「母親はなにをしていたんだ」という非難も聞かれるが、怒鳴る配偶者に逆らえなくなることは、残念ながら珍しいことではない。今では、チックや嘔吐など父親と同居中にあった子どもたちの症状はすっかり消えた。あのとき児相の介入を受けなかったらどうなっていたかと思うとおそろしい。

48時間ルールで子どもの命を守る

自治体には、子どもに関する保護者のさまざまな行為について危険だと判断すれば、児童相談所への通報義務があり、児童相談所には「48時間ルール」がある。虐待だとわかる相談や通報があった場合、48時間以内に家族の構成員に会って実態を確認する。「首を絞められた」という、命の危険さえある緊急性の高い状態では警察につなぐのは当然だ。

相談時の話を「ウソ」「話を盛った」などとするネットの中傷も目立ったが、これらも被害者への二次加害にあたる。自分より身長の高い相手に襟元をつかまれ、持ち上げて投げ飛ばされれば、主観としては首を絞められた状態になるだろう。