――法人税の実効税率の引き下げ問題で、財務省は相当、抵抗したのではありませんか。安倍首相が増税実施の決断を武器に使って、法人税の税率の問題、補正予算の規模の問題などで、財務省を自分流に巧みに誘導していったようにも見えます。

【菅】対財務省というよりも、総理の強い意志ですよ。デフレ脱却ができなければ財政再建も難しい。何が最も効果があるかと考え、法人税率の引き下げの検討を指示しました。最終的に総理が全体を見てこれでいくと判断されました。総理の強い意志でした。

――実際には首相官邸と財務省の間でどんな綱引きがあったのですか。

【菅】今年の4月22日、政府の経済財政諮問会議が開かれ、財政健全化の具体策づくりの話になりました。そこで私がちょっと気がつき始めたのが、15年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字額を半減する約束の問題です。

――民主党政権時代、政府は財政健全化目標であるプライマリーバランスの赤字、つまり国と地方を合わせて、政策経費を税収でまかなえるかどうかを示すGDP比の赤字を、15年度に10年度の半分にすると国際公約しました。GDP比で10年度は6.6%だった赤字を、15年度は半減させて3.2%に、さらに20年度には赤字をゼロにすると約束しています。

【菅】この半減の方針が財政計画や予算などに全部、組み込まれている。それはおかしいと気づきました。私は4月の諮問会議で「政権が代わったのだからもう1回、検証すべきだ」と言いました。9月のG20で日本の中期財政計画を示すことになっていて、その前に消費税増税実施も8月に決めるというスケジュールを組んでいました。私はこの路線は1回、白紙に戻そうと思いました。