予定利率は1%を切るまで縮小する
公的年金である厚生年金の不足を補うために「個人年金保険」に加入している人は多い。個人年金保険は保険会社が販売している金融商品。毎月払いの保険料積立型で年金種類が確定型(定額型)の場合、保険料払込期間終了後(据え置き期間がある場合はその後)、積み立てた保険料に配当等を上乗せした年金額を契約時に決めた年金支払期間だけ受け取れる。
だから安心というわけではない。理由は明快である。
デフレ脱却を目指す安倍政権と日銀は物価安定目標(インフレ率)を2%に据えている。一方、2000年代に加入した個人年金保険の期待利回りである「予定利率」は1.5%程度のはず。インフレ率2%に対して予定利率1.5%という比較だけでも年金がインフレに追いつかないことは明らかだが、その差は0.5%にとどまらない。また保険料は保険金の支払いなどの財源となる純保険料と、保険会社の運営に必要な費用になる付加保険料で構成されているので、保険料がまるまる年金の原資として積み立てられているわけではない。そうやって“保険の皮”をむいていくと1.5%という数字は1%を切る程度まで縮小してしまう。
現状の個人年金保険の魅力は運用力よりもむしろ節税機能にある。
「個人年金保険料税制適格特約」をつけることで「個人年金保険料控除制度」が適用され、1年間に支払った保険料の一部を控除額として所得額から差し引くことができるようになり、所得税と住民税が軽減される。この制度には11年12月31日以前の契約に適用される旧制度と、12年1月1日以後の契約が対象になる新制度がある。
所得税だけに絞って解説すると、旧制度では年間払い込み保険料が10万円を超えると一律5万円、新制度では8万円を超えると一律4万円の控除が受けられる(年間払い込み保険料額により控除額が変わる。例は最大控除額)。しかしそれは単純に毎年5万円または4万円税金が安くなるのではなく、所得税の税率(所得税率)分だけ税金が軽減されるのである。