日本ではどの要因の影響が大きいか

では、日本ではどの要因の影響が大きいのでしょうか。図表1は、日本の研究をもとに、それぞれのリスク因子が、認知症の原因の中でどのくらいの割合を占めるのかをまとめたものです。日本では合計約39%と、世界全体の推計(約45%)よりやや小さい値となっていますが、修正可能なリスク因子が認知症全体の相当な割合に関わるという方向性は一致しており、世界の知見と整合的な結果といえます。

【図表1】日本人における認知症の原因

図表1を見ると、いくつかのことが読み取れます。まず目を引くのは、日本においては難聴が最も大きな割合を占めているという点です。聴力低下が気になったら耳鼻科を受診しましょう。次に大きいのが運動不足。定期的に体を動かすことは、脳だけでなく血管の健康にも良い影響を与えます。ジムに通うような本格的な運動でなくても、散歩など、日常の中で意識的に体を動かす習慣を積み重ねることが大切です。

LDLコレステロール・糖尿病・高血圧・喫煙・過度の飲酒といった血管や代謝に関わる要因も、無視できない割合を占めています。これらはすでに治療法や管理法が確立されている病気です。治療中の方はその継続が、そうでない方も定期的な健診を通じて自分の数値を把握しておくことが、認知症予防という意味でも重要です。

こうして見ると「認知症の予防」は特別な取り組みというより、血管・代謝、目や耳や身体機能、そして社会とのつながりという日常の健康管理の延長線上にあることがわかります。一つひとつの効果は小さくても、複数の要因に継続して働きかけることが、着実な予防への近道といえるでしょう。

(初公開日:2026年3月19日)

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