ネットショップでは味わえない喜び

普通の店ではなかなか取り扱っていない趣味性が高いコレクションアイテムの購入には、ネットショップを利用している人も多いでしょう。店舗側も、限られた客しか来店できないリアルな店舗よりも、ネットショップのほうが多くの顧客につながる機会が増えて有利だと考えているかもしれません。しかし、多種多様なレンタルショーケースが集まっている秋葉原は、まさになんでもそろう巨大なフリーマーケット会場のようであり、大勢の顧客とつながる機会があるのです。特に日本のネットショップを利用することが難しい外国人や、商品の状態をきちんと確認したいこだわりを持つコレクターには、秋葉原のリアルな店舗まで足を運ぶ人が多いようです。

また、秋葉原のレンタルショーケースがネットショップに勝る強みとして、展示商品自体がコミュニケーションの手段となりえることが挙げられます。秋葉原のレンタルショーケースの店員は、出展される商品についてかなりの知識を身に付けています。その知識を活かしてショーケースの商品についてうんちくを書いた解説メモを貼り付ける店舗もあります。これは、店員が手描きポップで書籍を紹介する本屋と同じような効果があり、紹介文を書いた人が、今この店内にいるというリアリティが、客に店に対する親近感を持たせることができるのです。おもしろい解説メモは、その場で客同士の会話のきっかけにもなります。

レンタルショーケースの商品は、購入後でもコミュニケーションの手段となりえます。ある日、秋葉原のレンタルショーケースを数軒まわって掘り出し物のフィギュアを手に入れた私は、気分よく馴染みのメイドカフェに立ち寄りました。「ご主人さま、今日はお買い物でしたか?」とメイドさんに尋ねられ、戦利品のフィギュアを自慢げに見せながら、私はそれを探し出すまでの武勇伝を語り出します。ネットショップでは味わえない人のつながりの喜びが秋葉原にはあるのです。

そこで、レンタルショーケースで見つけた掘り出し物を持ち寄って紹介し合う機会を作ってみようと考えました。私が仲間たちと定期的に催している、秋葉原の趣味文化についての勉強会「アキハバラを、編む」(連載第26回《この街は「観光立国」のモデル(前篇)》 http://president.jp/articles/-/10694?page=2 参照)で、来月にクリスマスプレゼント交換会を計画しています。ただしプレゼントはレンタルショーケースで購入した物に限り、交換をした後に、それぞれが選んだ品について語ってもらうのです。

インターネットは人のつながりをサポートできる可能性があるにも関わらず、匿名での無責任な発言が蔓延する中で、人をつなげるどころか、不信感を募らせ孤立させる要因にもなってしまったと感じています。そんな今こそ、リアルに人が集まり面を向かわせ語り合う機会が必要だと思います。レンタルショーケースは、実際の蚤の市やフリーマーケットのように、その機会のきっかけを創りだせるのです。