それは「人の役にはたたない」こと?

「またねっ!」(コスプレイヤー=みるる、撮影=龍道)

10年前、秋葉原で出会ったコスプレイヤーが、自分自身をあざけるような笑みを浮かべながら私に言いました。「コスプレって、単に私が好きなことであって、何の価値もないことなんです。他人の役にはたたないし、コスプレがなくても誰も困らない。」その時の私は、何も言い返せませんでしたが、納得できずにもやもやとした気持ちになりました。この時から、私はいつかきちんと返答をしたいと思いながら、秋葉原の趣味文化や秋葉原に集まる人たちを見続けてきました。

コスプレに限らず、「好きなこと」を楽しむことには、間違いなく価値があります。皆さんも実感したことがあると思います。ストレスが軽減できて、仕事にもやる気が起きる。「好きなこと」への支出は、その関連ビジネスを活性化させ、さらには経済全体の成長にも寄与します。

「好きなこと」に支出するとき、何でも売っている秋葉原は便利な街です。そして、「好きなこと」を一緒に楽しむ仲間をつくるにも、秋葉原は最適な場所です。年齢も習熟度も、性別も国籍も関係ない。「好きなこと」さえあれば、今まであなたの周囲の誰も興味を示さなかったことでも、理解し共感してくれる人たちが必ず見つかります。どんな人でもあらゆる「好きなこと」でつながれる場所が、秋葉原なのです。

先日、電子工作のはんだづけ体験をしてみたいという女子学生を連れて、秋葉原の外れにある「はんだづけカフェ」に行きました。学生たちは、中学校の授業ではんだづけを体験した記憶があるだけで、まったくの初心者でした。持ち込んだ電子工作キットをおぼつかない様子で作り始めると、その様子を見かねたのか、自分の工具を持ち込んで隣で作業をしていた人がはんだづけのやり方や基本的な工作の手順を教えてくれました。さらに、自作の電子楽器を披露してくれる人や、学生たちの電子部品に関する質問にも丁寧に答えてくれる人もいました。ほんの2時間ほどの作業の間で、初対面の相手でも電子工作という「好きなこと」を通じてつながることができたのです。