いまはセカンドギアの状態
――就任以来、「スピード感を持て」とおっしゃっています。スピード感の定着については、どう自己評価していますか。
【津賀】スピードはすぐには上がらないというのが実感です。結局、突き詰めれば、パナソニックに1番欠けているのがスピード。スピードを出そうとすれば、なにが必要か。プライオリティの付け方が適切でなくてはいけない。そのためには、自分たちにとってなにが大事なのか、なにがチャンスにつながるのかといったことを頭のなかで整理しておく必要がある。
そして、もっと「個人プレー」を重視しなくてはいけない。組織がスピードを上げるのは難しいが、個人がスピードを上げることで、ほかの個人のスピードにも影響を与え、組織のスピードが上がることになる。スピード感を実現するためには大切な要素だと思っています。
――調和を重視してきたパナソニックが、個人プレーを奨励して大丈夫ですか?
【津賀】我々にとって、いまこそ個人プレーが必要です。いまの当社の役員を見ても、社員や外部から評価される人は、個人プレーができる人です。従来型の仕組みのなかでは、個人プレーができずに出世してきた人もいるだろうが、もうそれは通用しない。その価値観も変えなくてはいけないと考えています。私は、次の役員を選ぶときには、個人プレーができるという要素は外せないと考えています。
――スピード感では、米国西海岸の企業が成功例によく挙げられます。アップル、マイクロソフト、Facebook、パナソニックが出資しているテスラモーターズもそうですね。パナソニックは、西海岸型の企業に変貌していくということですか。
【津賀】パナソニックは、いままで家電中心でやってきて、その家電はすべて自前でやっていたわけですから、全社にわたって自前で展開するという文化があった。ただ、これではスピード感がないですし、強みも発揮しにくい。また、タフブックの例に戻りますが、ハイテクの部分は、マイクロソフトとインテルにいち早く最新技術を提供してもらうという信頼関係を築き上げ、自らはローテクにフォーカスし、顧客価値の最大化に取り組んだわけです。非常に合理的な考え方であり、これは西海岸の考え方だともいえますね。
私がアメリカの大学院留学時代に、米国西海岸に住んでいて感じたのは、「モノには正解がない」ということ。そして、「オリジナリティ、ユニークネスが1番の価値である」ということです。どれだけ自分のアイデンティティを発信できるのかが重要であり、私自身もそういうふうになりたいと思っています。
――ところで、パナソニックの経営に関していえば、6段速のギアに置き換えると、どこの位置に入っている状態ですか。
【津賀】まだまだセカンドギアぐらいの状態ですよ。トップギアに入るのは、18年より先の話になります。トップギアに入るとトルクがありませんから、そこから加速はしない(笑)。スポーティー走行をしていくためには、できる限りローギアでいきたい。ギアを上げたり、ギアを下げたりといったことも柔軟にしなくてはならない。いまはそういう段階です。