私は最近になってようやく「宗教」が社会的・歴史的要因として思っていた以上に重要だと気づきましたが、これは社会学の創始者エミール・デュルケームの見方です。デュルケームと同じように、私にとって、「個人」は「集団」のなかにしか存在しません。「集団」が弱ければ、「個人」は強くなるどころか、逆に弱くなる。とはいえ、宗教が再び復活するとは思えません。もう後戻りはできない。すると残るのは虚無感だけです。この虚無感のなかで、人生の意味は自明ではなくなり、正直、私自身も、人生には意味がないと感じています。

ここでの脅威は「ニヒリズム」です。「虚無そのものを神格化する」という感覚さえ生まれ、人や物や現実を破壊したいという衝動が生まれてくる〉

トッド氏によれば、米国とイスラエルによる無益で野蛮なイラン攻撃や要人暗殺は、ニヒリズムから生まれる「暴力への衝動」や「殺人の快楽」の発露である。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2026年5月号)
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