最も怖いのは「悪意」ではなく「無意識」
成田さんが演じた信治の姿から人間の内に秘める恐怖の正体がチラチラと顔を覗かせる。
人は必死になっているときは、周囲の声が聞こえなくなる。たとえ忠告されても耳に入らない。まさに信治がいい例だ。「自分は被害者だ」と思い込んでいる人間ほど、他者への攻撃が残酷になる。自分は正しいことをしていると信じているため、ブレーキが壊れているのだ。この「無意識の暴走」こそが、現代社会の最も深い病理である。
「無意識の暴走」を止めるために必要なことは、いかに正しい情報を掴めるかだ。
ひと昔前までは一つの情報を得ようとしたとき、人は時間をかけてさまざまな情報を自らで掴みにいっていた。しかし、SNSの普及により自分には必要のない情報すらもいとも簡単に手に入るようになった。また、その情報が正しいとは限らない。「真実っぽいもの」も混ざっているから厄介だ。
携帯が一人一台の時代を生きる私たちにとって「情報」は自分の片手に収まってしまっていると言っても過言ではない。だからこそ、「自分の目で見て感じたことを信じる」という感覚と、「情報と距離を持つ」という感覚こそが現代社会を生きる私たちにとって非常に大事なポイントだと感じた。
成田凌さん、沢尻エリカさんが語る映画『#拡散』
真偽の不確かな情報に翻弄される現代人の姿を映す映画『#拡散』。私たちの暮らしにとって身近なテーマを取り扱う本作において、演じ手たちはどのような思いでそれぞれの役を演じたのだろうか。主人公の浅岡信治役を演じた成田凌さん、新聞記者・福島美波役を演じた沢尻エリカさんに、話を聞いた。
――成田さんから見て、浅岡信治はどんな人物だと思いましたか?
【成田】「僕が演じた浅岡信治という人物は、自分や周りの人の欲によって徐々に別の人間がかたち作られていくように感じました。観る人によっては最終的に『この人、なんだか気持ち悪いな』という違和感を覚え、その姿が滑稽に感じるかもしれません。でも、誰もが持っている一面のように思います」
――信治の変容ぶりを見て、恐怖まで感じてしまいましたが?
【成田】「信治という人を通して人間の『無意識』という感覚が一番怖いと感じました。その言葉通り、被害者のような顔をしながら、無意識のうちに加害者にもなり得るわけですから。劇中に『あっという間に仕上がりましたね』というセリフがありますが、まさに人はあっと言う間にそっち側の人間として仕上がってしまうことがあります。人間の怖さ、恐ろしさは『悪意』ではなく、『無意識』なのかもしれません」




