割り箸を持って街に出よう

「オトメドン」プロジェクトの発表会の際に「箸勝」からいただいた割り箸は、「両口箸」という両端が細くなっている箸でした。一見、両端が同じ形状なので、どちらを口に入れても良さそうに思えるのですが、そうではありません。片方は自分用ですが、もう片方は神様用であり、命の恵みである食べ物に感謝しながら、神様と一緒にいただくという意味があります。

日本の割り箸は、元来、神事に使われていました。天皇即位の礼の後、大嘗祭の際に、宮内庁御用達である「箸勝」が納めた用具一式の中にも「両口箸」がありました。割り箸が神事に使われるのは、「穢れ」のないまっさらのものを大事にするためです。薬品漬けで穢れた外国産でなく、国産の割り箸を使うことに意味があるのです。

信心の話は別として、国産の割り箸を繰り返し使うことによって、食事を単なる腹を満たすためだけの行為でなく、「食べ物はもともと命あるもので、食事によって自分の命とつながっている」と、いっときでも厳かな気持ちになれることは、気持ちのよいものです。また、嬉しいことがあった時や、新たな気持ちで仕事に取り組みたい時などに新しい割り箸を使えば、その時の気持ちを食事のたびに思い起こすこともできます。

国産と外国産の割り箸の見分け方ですが、一番簡単な方法は、割り箸のつながった部分を割ってみれば分かります。きれいに均等に割れず、ささくれだつと、それはほぼ間違いなく外国産です。今までうまく割れなかったのは、自分の責任ではなかったのです。割り箸が悪いのです。

国産の割り箸は、どうすれば手に入れられるのか。百貨店の箸売り場に行けば見つかりますし、ネットの通信販売でも入手可能です。秋葉原に立ち寄る機会があれば、「箸勝」に直接行ってみるのもよいでしょう。問屋の店構えですが、気軽に個人でも購入できます。500円以下で入手できる割り箸もあるので、一年間毎日気分よく使うことができれば、かなり割安です。

あるいは、鰻の「神田川」、蕎麦の「かんだやぶそば」(火災のため、現在休業中)、神田明神前の甘酒茶屋「天野屋」、鳥すき焼きの「ぼたん」など、秋葉原界隈の老舗飲食店に行くと「箸勝」の割り箸が出てくるので、食事をした後、持ち帰ることをお勧めします。値段の高低に係わらず、日本の「おもてなし」文化を心得ている飲食店では、塗り箸、ましてや合成樹脂の箸など出しません。割り箸は「あなただけのため」に用意した、まっさらな箸ですから、気に入れば持ち帰ればよいのです。

私はいつも新しい懐紙で割り箸の先を包んで持ち歩き、必要な時は、自分の割り箸を取り出して気分よく食事をします。外食に出かける際は、ぜひ自分専用の割り箸を持ち歩いてみてください。箸を使い始めた時の気持ちが思い起こされ、食べ物や命のありがたさを感じられて、とても気分がよくなるはずです。

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