Webサイト上で自分がほしかった車や商品など、サイトと別のジャンルの広告が出てくることもある。これは、あなたがその広告のターゲットとしてふさわしいと判断されている証拠。その判断の根拠となった、あなたのネットでの行動履歴に関するデータを「オーディエンスデータ」と呼ぶ。
なお、このデータはcookieなど、個人を特定しにくい方法で収集される。いわゆる「ビッグデータ」の1つだ。
このような広告手法は、消費者との継続的な関係づくりを重視する消費財メーカーや、商材ごとに異なるターゲットが存在するメーカーにとって特に有効であるとされている。しかし、その製品の情報を積極的に探していたユーザーとは違い、オーディエンスデータの分析によって広告のターゲットになったユーザーは、今すぐに購入ニーズがあるとは限らない。したがって、「見込み客を育成していくという観点での新しいコミュニケーション戦略が必要になる」(ネット広告大手・アイレップ広報担当者)。
以上のように、広告のターゲットは「枠から人へ」、つまり「どのサイトに掲載するか」から「誰に見てもらうか」に変化している。しかし、「枠」の概念が希薄になる点には注意も必要だ。アドバタイジングドットコム・ジャパンの成田敬氏は「ターゲットを的確に抽出しても、接触する『広告枠』がブランドに適したクオリティでなければ、適切な『人』に対して逆に悪い印象を与えてしまう」と話す。どこまで広告は個人に迫ることができるか。個人情報への意識の高まりもあり、今後もせめぎあいが続きそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)