ロシアや中国による金の「爆買い」
米ドルの価値が下落すると、各国が保有する外貨準備の価値は目減りする。米国の制裁でドルが使えなくなる恐れも高まる。
リスクを分散するため、近年、中央銀行の金保有量は増加傾向だ。特に、ロシア、中国など、対米関係が悪化傾向にある国は金の保有量を増やした。リーマンショック以降、中国人民銀行は趨勢的に金の保有を増やした。
2017年には、ウクライナ問題で経済制裁を科されたロシア中銀が金購入を増やした。トルコの中央銀行も、外貨準備における金の保有割合を引き上げた。2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、米欧など主要先進国はロシアの大手銀行などに経済制裁を科した。
そうした状況を勘案して、国際資金決済システム、SWIFT(国際銀行間通信協会)にアクセスできなくなると危惧する新興国は増えた。ドル離れは一段と加速し、金需要はさらに増加した。昨年9月、ポーランド中銀は、外貨準備に占める金割合を30%に引き上げると表明した。
ある調査では、75の国と地域、の中央銀行のうち、3割程度が金保有を増やす方針だという。昨年、中国の金準備は、政府公表の2303.5トンを上回る5500トンだったとの試算もある。米国債の保有を減らし、ドルの信認低下に備えて金保有を積み増す中国の方針は明確だ。
政府・銀行だけでなく個人の需要も増加
今のところ、金の供給量は安定している。世界の金鉱山の生産(採掘)量は年間3500トン前後といわれている。産業用途の金リサイクルを含めると供給量は5000トン近い。
その中、中央銀行による金購入量は年間採掘量の3分の1を上回ったようだ。ドル信認低下に対応するため、中央銀行の金購入増加で投資需要も高まった。
個人の宝飾品などの実需も増えた。インドでは、春の宗教的な祭礼(アクシャヤ・トリティーヤー)の時期に金を買うと縁起がよいといわれている。2024年、インド政府は金の関税を引き下げ、個人の購入は増えた。
中国、中東などでも金を買う個人が増えている。中国では、国内での金取引価格の急上昇により、消費者物価が前年同月の実績を上回ったとの指摘もある。

