丸紅にとって過去最大のM&Aとなったガビロンの買収劇。日本初の「穀物メジャー誕生」の裏側に迫る。

「丸紅+ガビロン」で穀物メジャーに

丸紅とガビロンの経営陣。朝田照男丸紅会長(右から3人目)と岡田大介丸紅常務(1番左)。(写真提供=丸紅)

米オレゴン州ポートランドに穀物輸出のターミナルを丸紅が所有したのは1978年。当時、穀物メジャーの一角を占めながら、事実上の倒産となった「クック・インダストリーズ」から買い取った案件だった。この取引から、丸紅の穀物メジャーへの挑戦の道が始まった。

それから35年。今年7月6日に昨年5月に買収を決断し、手続きを進めていた米穀物大手「ガビロン」の買収が、1年以上経ってようやく完了した。

現在、穀物メジャーと呼ばれる企業は、5社存在する。カーギル(米)、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM。米)、ルイ・ドレフュス(仏)、ブンゲ(オランダ)、グレンコア(スイス)である。

今回、丸紅が買収に成功したガビロンは、正確には準メジャーであるが、例えば、米国における穀物保管能力は、ADM(1040万トン)、カーギル(900万トン)に次いで(830万トン)を扱う米国3位の穀物商社だ。今回の買収で、丸紅+ガビロン連合で一挙に950万トンを扱う米国2位の“巨人”に躍り出た。今後、新しく丸紅+ガビロン連合が、穀物メジャーとして、6社プレーヤーの一角を担うことになる。

昨年12月、丸紅の朝田照男社長(当時)は、感慨深げだった。

「78年に買収した穀物輸出のターミナルは小さな案件だったけれど、小麦を中心にビジネスを拡大するために、まずはポートランドから始めた。さらに、長年かけて、カントリーエレベーターという穀物貯蔵所を60カ所持てるようになった。このように、長年築いてきたビジネスの蓄積があるから、今、ガビロンを買ってもコントロールしていける。やっとメジャーに伍するところまできた。これは昨日、今日1日で、できたわけではないんです」

一介の商社である丸紅が、ガビロンを買収したという事実。それには、業界の7割を牛耳ってきた穀物メジャーの一角に入る、という大きな意味がある。規模ではガビロンよりも小さい丸紅が、なぜガビロンを買収することができたのか。具体的な話に入る前に、穀物ビジネスの構造、同買収に関わったキーマンを、簡潔に説明しておきたい。

※関連記事:<丸紅>ガビロン買収、穀物メジャーへの挑戦状 http://president.jp/articles/-/8893