地形すら変えて仲間が戦える環境を作る
違和感を抱えながらも「仕方ない」と流そうとしている。
その瞬間こそ、「壊す」か「創るか」を選ぶチャンスです。
米陸軍工兵学校で学んだ最大の教訓は、環境とは「与えられるもの」ではなく「自ら創るもの」だということ。
工兵は、必要なら、その場の「地形」を変えることで、仲間が戦える環境を整える専門家です。橋がなければ架け、状況によっては敵の進路を防ぐために橋を破壊もします。
「破壊」と「創造」を呼吸のように繰り返しながら、戦況そのものを創り変えていく――それが工兵の仕事です。
私たちの仕事や人生でも同じです。
古い制度や慣習、思い込み。それらが前進を妨げているとき、環境が整うのを待つのではなく、自らの手で、構図を壊し、創り直す。それが、セルフスターターという生き方です。
アフガン戦争の最大の敵は「古い常識」だった
2000年代初頭、イラク・アフガニスタン戦争に展開した米軍は、圧倒的な軍事力を持ちながらも予想外の苦戦を強いられました。原因の1つが、IED(Improvised Explosive Device:即席爆弾装置)です。
手りゅう弾や砲弾、地雷などを流用してつくられる自家製爆弾で、外見から見分けがつかず、道路脇やがれきにまぎれて設置されます。そして、敵は正面から向かってくる軍隊ではなく、街の建物や人混みにまぎれて攻撃してくるゲリラ。戦車さえ破壊され、2001年から2007年の間に約8万件の被害が発生。負傷兵の4割以上がIEDによるものでした。
それでも当時の米軍は、かつての成功パターンに縛られ、戦い方を更新できずにいました。のちに軍も認めています。「敵の戦い方が変わっていたにもかかわらず、現実の脅威に即して戦略を更新できなかったことが、被害の拡大を招いた」と。
最大の敵は、敵そのものではなく、「自分たちの常識」だったのです。
そのようななか、現場の工兵たちは動きました。恐怖と緊張のなかで、「どうすれば仲間を安全に通せるか」を起点に、対策を自ら生み出していったのです。
危険地域では遠隔操作のロボットを投入し、人が近づかずに爆発物を処理できるようにしました。さらに、IEDに耐える装甲車を導入して被害を大幅に減らしました。
作業の手順も見直し、道路わきの砂利やがれきを片づけて異変に気づきやすくし、危険な箇所を把握して表示する、一連の仕組みを全軍に広めました。
これらの変革は、上層部の命令ではなく、現場から生まれたものでした。破壊の現場で、創造の知性が芽吹いた。その呼吸が、戦術を進化させ、組織を生かしたのです。

