大手が勝ち、中小は潰れる
こういった事例はもはや業界にとって当たり前のことになっているのだろうか。ホテルのコンサルタントとして活躍する牧野知弘 オラガ HSC社長に話を聞いた。
「すべてのビジネスホテルが安さだけを至上命題にしているわけではありませんが、以前と比較して安くなっているのは事実です。そうは言っても、ウィークリー翔の例は極端ですね。ただ、日によっては1000円台で泊まれるビジネスホテルも結構あります。通常のビジネスホテルであれば、相当削って原価が1室あたり2500円。通常は3000円台でしょう。この原価表を何割か割り増しすれば、ビジネスホテルの原価を推測できます。お客が増えてもホテル全体の経費はあまり増えないので、バーゲンセールをして少しでも売り上げをあげようとする例はたくさんあります」
ホテルの利益の指標の1つとして、利益が売り上げに占める比率であるGOP(営業粗利益)比率がある。牧野はビジネスホテルのGOP比率がほかの宿泊業態に比べて圧倒的に高いことを指摘する。
「ちょっといいビジネスホテルになるとGOP比率は50%を超えます。つまり売り上げの半分以上が利益。一方、老舗のシティホテルでは清掃もリネンサービスもすべて自前でやる。そういったスタッフを正社員として抱え込むと、当然経費は増える。ですからシティホテルですとGOP比率で2割ぐらいです。2割を切ると経営が相当苦しくなっていく」
圧倒的な利益率を誇り、他を圧倒するビジネスホテルだが、牧野はビジネスホテル業界が既にコモディティ化していると指摘する。
「高度経済成長を経て日本が全国的に発展する中で、ビジネスパーソンの移動も増えました。日本は南北に長いですから、必然的に移動距離は長くなる。ビジネスホテルはそういった状況で誕生した。業界の情勢はここ10年ぐらいで大きく変わりました。コモディティ化が進めば資本力のある大手が勝ち、体力のない者は敗れ去る。東横インやアパホテルといった超大手が幅をきかせ、町場の中小規模のビジネスホテル、昔ながらの旅館などは、独自色を出さないと次々とつぶれる時代になった」
(文中敬称略)