金価格が下げ止まらない。米ドル建て金価格が最高値を付けたのは2011年9月のこと。1トロイオンス=1900ドル超まで上昇した。その後、約1年にわたって1500~1700ドルで推移していたが、今年4月の急落を機に一気に弱気へと転じ、1200ドルを割り込む展開となった。

なぜ急落したか。その理由は、そもそもなぜ1900ドル超まで金価格が上昇したのかを考えればいい。貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、今回の暴落の背景を次のように見ている。

「金価格が大きく上昇した背景にあるのは、QEI~IIIまで行われた米国の量的金融緩和だ。それをよりどころにして投資家たちは金を買い進めていたが、今年度に入って量的金融緩和が縮小されるという見方が浮上したため、一気に売りへ回った」

金はインフレの可能性が高まると買われる。「インフレ=モノの値段が上がること」と考えればわかりやすいだろう。金は実物資産であるから、量的金融緩和によって、市中に流通するお金の量が増えれば、お金の価値は下落し、相対的にモノの値段は上がる。つまり、実物資産である金の価値も上昇する。

逆に、量的金融緩和が縮小すればお金の価値が上がり、モノの値段は下がる。結果、金価格も下落する。つまり4月以降の金価格急落は、米国の景気回復期待によって、量的金融緩和がいよいよ終わりを告げるとの見方が広まったからと言えよう。

金を保有している投資家にとって最大の関心事は「どこまで金価格は下がるのか」ということだろう。現状、金市場は売り一色だ。ヘッジファンドなどの投機筋は、ETF(上場投資信託)を通じて金の現物に投資している。なかでも代表的な「SPDRゴールド・シェア」の残高は、昨年末で1350トンだったが、直近では約950トンにまで減少した。