集合住宅版のスマートハウスが誕生

例えば、横浜市が進める「横浜スマートシティプロジェクト」。「370万人規模の先進都市・横浜を舞台にした世界一のスマートシティ・モデルの先行確立、 海外都市に向けた横浜型ソリューションの輸出」を掲げるこのプロジェクトでは、低炭素社会を実現する要素技術を連携させ、社会システムへと昇華させる多様な取り組みが実施されている。

エネルギー企業が中心となって進める「集合住宅版スマートハウス実証試験」もその構成要素の一つだ。これは横浜市磯子区の地下1階、地上4階建て、全24戸の集合住宅に、家庭用燃料電池や太陽熱利用ガス温水システム、太陽光発電装置などの分散型エネルギーシステムを設置し、建物全体で熱と電気を融通。統合制御システムを使い、ゼロ・エネルギー化を目指す取り組みだ。

戸建て住宅では開発や普及が進むスマートハウスだが、電気や熱の効率利用を考えれば、余りや不足分を状況に応じてやりとりできる「集合住宅」での取り組みは意義深い。実際、今回のプロジェクトでは、4住戸あたり2台の家庭用燃料電池を配し、それでつくったお湯をその4戸で分け合う形。また、屋上の太陽光発電と家庭用燃料電池でつくった電気は住棟内全体で分け合い、さらに余った場合は電気自動車に充電する。このような融通を適宜行うことで、つくったお湯や電気を極力無駄にしない状態をつくり上げているのだ。

その結果として、棟全体の電力供給では太陽光発電と家庭用燃料電池でつくった電気で81.8%をまかなうことに成功(他棟への融通含む。2012年6月8日実測データ)。また同じく給湯についても家庭用燃料電池でつくったお湯で83.6%をまかなうことができた(2012年6月8日実測データ)。いわゆるエネルギーの地産地消で、需要の8割以上をカバーできたというのは、注目に値する成果といっていいだろう。

忘れてはならない「熱エネルギー」のスマート化

「横浜スマートシティプロジェクト」の事例で紹介したとおり、スマートコミュニティにおいて忘れてはならないことの一つは、「熱」の効率活用だ。例えば、一般家庭のエネルギー消費を見てみると、給湯や厨房で使うエネルギーが全体の36.4%を占める。これは、冷房と暖房を合わせた28.9%よりも大きい(エネルギー白書2013より)。エネルギーというと電力のことをイメージするかもしれないが、熱を上手にコントロールすることで、エネルギーのスマート化は一段とその実効性を高められるわけだ。