なぜビジネススクール必修科目なのか
多くの経営者、ビジネスパーソンにとっては会社をたたむ、といってもなかなかピンとこないかもしれません。しかし、海外のビジネススクールではビジネスプランを学習する際に、exit、つまり会社のたたみ方を考えろ、と叩きこまれます。起業家は当然のこととして、ベンチャーキャピタルなどの投資家は、出した資金がどう化けて儲かるのかを知りたいのです。最終的に誰かに高く買ってもらう目途のないビジネスにお金を出す投資家は存在しないのです。これはビジネスの基本です。
しかし日本の中小企業経営者の間には、まだこの基本が浸透しておらず「ピンとこない」ものになってしまっており、経営者の資産や従業員の雇用がむざむざ失われる「会社の死」が少なくないのです。皆さんの大切な会社を殺さないためにも、会社のじょうずなたたみ方について現実を抑えておきましょう。
今回は、会社を閉鎖する場合と会社を売る場合に分けて、逆算スケジュールを立てるために、会社をたたむまでに、実際に何が起きていくのか、ということを整理していきましょう。
1週間で破産できますか
連載第2回目(http://president.jp/articles/-/10629)で申し上げたとおり、資金繰りに窮した会社をたたむ代表的な方法は「破産手続」です。
破産といっても、法人の規模や置かれている状況はさまざまであり、これにより、スケジュールも変わってきます。既に取引先への支払が滞っており、債権者が会社へ取り立てに来ているような場合には、一刻も早く裁判所に破産手続を開始してもらい、会社を管財人の管理下に置いて混乱を防ぐ必要があります。また、会社が不渡りを出すことが確実な場合には、不渡り日以前に破産手続開始の申立てをして、混乱を防止する必要があります。
破産手続には、少なくとも100万円以上の費用がかかりますので、これを捻出するために時間が必要な場合もあります。
破産申立て日(Xデー)は、このような破産手続費用を捻出する時間を稼ぐためにも、会社の資金繰りとの関係で決める必要があるということです。
弁護士に破産の申し立てを依頼する前に財務情報を整理し、1週間あれば破産手続開始申立てができるよう日頃から財務情報を整理しておくことが理想です。破産を考える時点では手遅れです。経営者も財務会計を学んでください。わからないことは税理士や経理担当に質問してください。要領を得ない税理士や経理担当であれば変えるくらいの勢いが必要です。それくらい財務を真剣にとらえてください。
申立時に必要となる破産手続申立書には、(1)会社に対する債権者及びその債権額の一覧表、(2)会社に対する債務者及びその債務金額の一覧表、(3)資産の一覧表、(4)確定申告書(直近2年分)を添付する必要があります。このような財務情報は、健全な経営のためには当然必要ですが、破産目前の企業では整備されていないことが多いのが実状です。財務会計を学ばない経営者は、会社を殺すだけでなく、会社をうまくたたむことすらも難しいのです。