「就職氷河期」真っ只中でありながら、この数は多い。
「広島から試験会場の大阪や東京へ片道5~6時間ほどかけて通った。同じ大学の学生の中には、エントリーシートで落ちることが続くと、精神的に落ち込み、大阪や東京まで通うことができなくなった人もいる。内定がもらえないために、心の病になった学生もいると聞いた」
研究室には同学年で10人ほどの学生がいたが、希望する会社に入社した者は少なく、大学院に進んだり、中堅・中小企業などに就職した。
住友商事広報部の後藤瑠美氏(09年、同志社大学法学部法律学科卒)は、3年(07年)の8月から外資系証券のインターン・シップに参加した。これは事実上の採用試験であり、就職活動のスタートは早い。インターン・シップには東大の学生が目立ったという。同じ大学のゼミの学生は、3年の秋から始めるケースが多かった。
「景気はよかったが、危機感は強かった。関西の学生は、東京と比べるとスタートが遅いと言われていた。インターネットの掲示板などを見て、動きに遅れないように動向を調べていた」
大手の金融、商社、メーカーなどを中心にエントリーし、その数は約15社。内定は3社だった。面接では語学を使ったコミュニケーションに自信があること、さらに日本の学生代表として法的交渉術の世界大会「インターナショナル・ネゴシエーション・コンペディション」に出場することをアピールした。
ゼミは約30人で、10人ほどは大学院などに進学、残り20人の9割ほどは大企業に進んだ。30社ほどにエントリーし、20社前後にパスし、数社から内定を得るケースが多かったという。
「内定が取れない学生にはスタートが遅い人もいるが、早い人もいた。たくさんの会社を受けるうちに、志す方向が見えなくなり、やる気を失っていくように思えた」
08年秋には、リーマンショックが起き、景気動向が再び悪化した。非正規社員である派遣社員や期間工などの人員削減に続き、正社員のリストラが一層激しくなる。大企業は、大卒の新卒者採用者数をまた減らし始めた。